陽射しがジリジリと皮膚に染み込んでくる。
むせかえる様な熱気に僕は思わず目迷いを覚えた。


あと数分で僕の出場する5000m走が始まる…

『お前、何緊張してんだよ?』

嫌な薄笑いを浮かべながら"アイツ"が声をかけてくる。

「べつに…」

誰にも聞こえないくらいの声で僕は応える。

(こいつに…絶対に勝つんだ!もう、負けたくない!!)

僕のこの想いを、"アイツ"は気付いているのだろうか?

係員が選手達をスタートラインへ誘導して行く。
僕はゆっくりと列の最後尾へ並ぶ。

皆談笑しながら歩いているのに、僕だけはじっと黙ったまま…

まるで僕は異質な物のようだ…



スタートライン

出場選手が一斉に並んだ
僕と同じ位置に"アイツ"もいる

5000m先のゴールを目指して、多くの選手が集中を高めてる。

けれど僕は…僕にはゴールこそがスタートラインだった。

この競技で"アイツ"に勝ってゴールすること…

そこから初めて、『本当の僕の人生』が始まるんだ。


大きく一つ深呼吸をする…そしてゆっくりと…意識を集中する。

その中でいつしか僕は"アイツ"との思い出の中にいた…