翌朝、
寝殿の扉をノックする侍女の声に、
凌暁は目を覚ます。
「国主さま。雪蘭様がお目覚めでございます…」

急ぎ支度を済ませて雪蘭の寝室に向かう。
凌暁が寝台の前に立つと、
雪蘭はうつらうつらと目を開け、微笑む。
「おはようございます……お心遣いありがとうございます。」
凌暁は静かに近づき、その手を雪蘭の手に重ねる。
「昨夜はよく眠れたか、雪蘭?」
「はい、おかげさまで…」

ふと視線が自然に雪蘭の胸元に落ちる。
そこには、怪しげな護符が
薄布の間からちらりと覗いていた。
「これは……誰からもらったものだ?」
咎めるような凌暁の声色に雪蘭は一瞬迷い、
震える声で答える。
「そこの璃月から……蓮音さまからの言付けだそうで……霊力が安定する護符だと聞いております…」

その瞬間、凌暁の瞳が鋭く光る。
麒麟が夢で言っていたものに違いない。
「お前……璃月か。お前が雪蘭に渡したのだな?!」

凌暁のあまりの剣幕に雪蘭は驚愕する。
護符はただのアクセサリーではなく、
呪詛の力を秘めていたのだ。
凌暁はその手で雪蘭の胸元から護符を取り上げ、
握りつぶす勢いで璃月に詰め寄った。
「お前、これが何なのか分かって雪蘭に渡したな!」
璃月は怯えながらも、必死にしらを切る。
「わ、私には……そんなつもりは……蓮音さまから言付かった物をお渡ししただけで。」