一方、寝室では。
雪蘭は布団の中で目を閉じられずにいた。
外から微かに聞こえる焚き火の音が、胸に刺さる。
涙が滲みそうになるのを堪えて、
彼女は唇を噛んだ。
――どうして、あの方は私を避けるの。
――私の「視える力」が怖いのだろうか。
幼いころから、
普通の人には見えないものを見てしまう体質のせいで、
彼女は何度も孤立してきた。
この国に嫁いで来て以降、
誰かに微笑みかけるたび、
侍女たちはこっそり囁き合う。
“見てみて。雪蘭様ったら、また誰もいない方を見て笑っているわ” と。
そんな彼女に、凌暁だけは礼を失わず接してくれた。
だからこそ――その優しさに、少しでも本心が混じっていてほしかった。
やがて夜が明ける。
雪蘭が浅い眠りから目を覚ますと、
部屋の扉の隙間から朝の光が差し込んでいた。
その手前で、外套を掛けたまま腰を下ろし、
眠る凌暁の姿。
焚き火の番を終え、
夜明け前に戻ってきたのだろうか。
彼は雪蘭の方を向いたまま、
穏やかな表情で眠っていた。
雪蘭の胸の奥がほんのり温かくなる。
――もしかしたら、嫌われてはいないのかもしれない。
そう思った途端、頬が熱くなった。
彼女は小さく息を吐き、寝台の端でそっと微笑んだ。
凌暁との距離はまだ遠い。
けれど、心の中で凌暁への切ない気持ちが湧き上がっていた。
雪蘭は布団の中で目を閉じられずにいた。
外から微かに聞こえる焚き火の音が、胸に刺さる。
涙が滲みそうになるのを堪えて、
彼女は唇を噛んだ。
――どうして、あの方は私を避けるの。
――私の「視える力」が怖いのだろうか。
幼いころから、
普通の人には見えないものを見てしまう体質のせいで、
彼女は何度も孤立してきた。
この国に嫁いで来て以降、
誰かに微笑みかけるたび、
侍女たちはこっそり囁き合う。
“見てみて。雪蘭様ったら、また誰もいない方を見て笑っているわ” と。
そんな彼女に、凌暁だけは礼を失わず接してくれた。
だからこそ――その優しさに、少しでも本心が混じっていてほしかった。
やがて夜が明ける。
雪蘭が浅い眠りから目を覚ますと、
部屋の扉の隙間から朝の光が差し込んでいた。
その手前で、外套を掛けたまま腰を下ろし、
眠る凌暁の姿。
焚き火の番を終え、
夜明け前に戻ってきたのだろうか。
彼は雪蘭の方を向いたまま、
穏やかな表情で眠っていた。
雪蘭の胸の奥がほんのり温かくなる。
――もしかしたら、嫌われてはいないのかもしれない。
そう思った途端、頬が熱くなった。
彼女は小さく息を吐き、寝台の端でそっと微笑んだ。
凌暁との距離はまだ遠い。
けれど、心の中で凌暁への切ない気持ちが湧き上がっていた。



