― 山と水の沈黙
冷えた空気の中、
凌暁は洞窟の奥に座していた。
他の国主たちもそれぞれに場所を定める。
この2日間は喋ってはならない。
通常であれば、
それは苦行であっただろう。
だが1週間もの間、
連日に渡たって神事に挑んだ彼らには
全くもって苦にならなかった。
彼らは疲れ果てていたのだ。
喋ろうにも喋る気力がなかった。
暗い洞窟の中で火も灯さず、
ただ己の呼吸だけを聞く。
掌には黒い祈りの石――
それを磨くたび、
凌暁の頭の中に過去の戦場の記憶が甦った。
燃える城、倒れる兵。
冷たくなった手を握ることもできず、
ただ前へと進むしかなかったあの日々。
――その全てを贖うために。
凌暁は目を閉じ、
ひとつ、またひとつ石を磨く。
一心不乱に磨き続けていたが、
ふと闇の向こうに何かの気配を感じ、
ふっと顔を上げた。
すると洞窟の奥の方で
ほのかな光が揺らめいていた。
(……また、あの光だ)
旅の途中でも見た、あの淡い白光。
だが今は違う。
あの時より光はより近く、より強く
まるで、何か実体が動いているかのように
少しずつ形を変えながら、
しばらく佇んでいた。
冷えた空気の中、
凌暁は洞窟の奥に座していた。
他の国主たちもそれぞれに場所を定める。
この2日間は喋ってはならない。
通常であれば、
それは苦行であっただろう。
だが1週間もの間、
連日に渡たって神事に挑んだ彼らには
全くもって苦にならなかった。
彼らは疲れ果てていたのだ。
喋ろうにも喋る気力がなかった。
暗い洞窟の中で火も灯さず、
ただ己の呼吸だけを聞く。
掌には黒い祈りの石――
それを磨くたび、
凌暁の頭の中に過去の戦場の記憶が甦った。
燃える城、倒れる兵。
冷たくなった手を握ることもできず、
ただ前へと進むしかなかったあの日々。
――その全てを贖うために。
凌暁は目を閉じ、
ひとつ、またひとつ石を磨く。
一心不乱に磨き続けていたが、
ふと闇の向こうに何かの気配を感じ、
ふっと顔を上げた。
すると洞窟の奥の方で
ほのかな光が揺らめいていた。
(……また、あの光だ)
旅の途中でも見た、あの淡い白光。
だが今は違う。
あの時より光はより近く、より強く
まるで、何か実体が動いているかのように
少しずつ形を変えながら、
しばらく佇んでいた。



