また夜がやって来た。
外の空気は澄み、
虫の音が静かに響いている。
「今日は……少し、不思議な気持ちでした。」
雪蘭が小声で呟くと、
凌暁は隣で湯を飲みながら頷いた。
「私もだ……筆を取る手が、少し震えてしまった。」
「え?」
驚いて顔を上げると、
凌暁は目を逸らしながら続けた。
「そなたが隣にいると、何故だか妙に落ち着かないんだ。戦の前でも、これほど鼓動が早くなることはないのに」
「……それは」
雪蘭の胸がきゅっと締め付けられる。
頬がじんわりと熱くなり、
何も言えなくなる。
凌暁も雪蘭に仄かな想いを抱いているのだろうか。
灯の光だけが、
二人の影を並べて揺らしていた。
そわそわした気持ちのまま床につき、
やがて雪蘭は布団の中で身を動かす。
ほんの少しだけ――凌暁様の方へ。
その音に気づいた凌暁も、
無意識のうちに雪蘭へと体を寄せる。
その刹那、
指先と指先が、ふと触れた。
雪蘭は息を止めた。
けれど、離れられなかった。
凌暁の手がそっと触れ返し、二人の指が絡む。
言葉はなかった。
ただ静かに、互いの温もりだけを確かめていた。
凌暁の手は大きくて、
雪蘭の全てを包み込んでしまいそうだ。
(……この手を、ずっと離したくない)
雪蘭の心に、
そんな想いが芽生えた夜だった。
外の空気は澄み、
虫の音が静かに響いている。
「今日は……少し、不思議な気持ちでした。」
雪蘭が小声で呟くと、
凌暁は隣で湯を飲みながら頷いた。
「私もだ……筆を取る手が、少し震えてしまった。」
「え?」
驚いて顔を上げると、
凌暁は目を逸らしながら続けた。
「そなたが隣にいると、何故だか妙に落ち着かないんだ。戦の前でも、これほど鼓動が早くなることはないのに」
「……それは」
雪蘭の胸がきゅっと締め付けられる。
頬がじんわりと熱くなり、
何も言えなくなる。
凌暁も雪蘭に仄かな想いを抱いているのだろうか。
灯の光だけが、
二人の影を並べて揺らしていた。
そわそわした気持ちのまま床につき、
やがて雪蘭は布団の中で身を動かす。
ほんの少しだけ――凌暁様の方へ。
その音に気づいた凌暁も、
無意識のうちに雪蘭へと体を寄せる。
その刹那、
指先と指先が、ふと触れた。
雪蘭は息を止めた。
けれど、離れられなかった。
凌暁の手がそっと触れ返し、二人の指が絡む。
言葉はなかった。
ただ静かに、互いの温もりだけを確かめていた。
凌暁の手は大きくて、
雪蘭の全てを包み込んでしまいそうだ。
(……この手を、ずっと離したくない)
雪蘭の心に、
そんな想いが芽生えた夜だった。



