雪蘭は筆を取る手が震えていた。
「……このような儀は、初めてです。」

凌暁は微かに口元を緩め、
「私もだ。けれど……雪蘭となら、悪くない。」
そう言って筆を取り、
迷いのない筆致で一文字を記す。
――「守」。

続けて雪蘭が、隣に筆を滑らせる。
何を書くべきか。
凌暁様が一文字で記されたのなら、
私も私の願いを現す一文字を。
――「信」。

二人の筆跡が重なり合い、ひとつの言葉を形づくる。
「守信(しゅしん)」――誠を守る、という誓い。

2人の願いが記された布を
凌暁と雪蘭はともに捧げ持ち、火にくべた。
するとあっという間に火に包まれ、 
跡形もなく消え去る。
そしてその煙がゆらめきながら
天へとゆっくり昇っていった。

その瞬間、吹き抜けた風が白絹をさらい、
まるで二人を包み込むように、
柔らかな光が差し込む。
まるで白虎がその誓いを見届けているかのようだった。