胎児が成長するにつれ、
凌暁の過保護ぶりはさらに加速していった。

寝るときは常に手を雪蘭のお腹に添え、
胎動を感じるたびに「大丈夫か……?」と耳元で囁く。

外出時は護衛を増員、
通行人にも視線を光らせた。

寝不足でも雪蘭のためなら徹夜で付き添い、
体調を確認し続ける。

最初は困惑していた雪蘭も甘え上手になり、
夜は膝枕で顔を埋めるたびに、
凌暁は「可愛い……私の雪蘭……」と呟き、
そっと唇を額や頬に落とす。

麒麟は上空から二人を見下ろし、
呆れ気味に「もう、そろそろ……お前たちは自重せよ」
と囁くが二人にはまるで聞こえていなかった。

そして月は満ち、
ついに雪蘭の陣痛が始まる。

凌暁は手を握り、
額に冷や汗を浮かべながらも落ち着いた声で励ます。
「大丈夫だ、雪蘭……そなたは強い……私がついている……」

長い陣痛の果てに、
夜明けを照らす朝日とともに
産所に産声が響いた。
凌暁は涙を流しながら赤子を抱き上げ、
雪蘭の顔にキスを落とす。
「雪蘭……私たちの子だ……無事で、本当に良かった……!」

雪蘭も涙を浮かべ、赤子の小さな手を握る。
「凌暁……ずっとそばにいてくれて、ありがとう……無事で良かった……」

麒麟も上空で祝福の光を放ち、
生まれた赤子を祝福する。
次の時代を担う総領の君の誕生は
霜華国に大きな喜びをもたらした。