共働きせずとも、家族がお腹いっぱい幸せに暮らせる。
それがどれだけ凄いことか、私は知っている。
小学生の頃からたくさんのお小遣いとスマホが与えられ、特に勉強を強いられることはなかった。
お父さんには感謝してもしきれないくらい、私に経験とお金と幸せを与えてもらっている。
───私が本当に欲しいものは、愛情だけど。
“愛情”以外はたっぷりともらっている私が、まだおねだりするなんて傲慢だ。
お父さんは良く言えば陽気で、悪く言えばうるさい。
弟の柊もお母さんも、受け答えが小さく、それを幼い頃から私に教え込まれていた。
だから、私がお父さんの話の相手をするしかない。
「自分でやらない」お父さん。
「人の気持ちを考えてない」お父さん。
「授業参観の時だけ張り切る」お父さん。
「言い方が強い」お父さん。
…本当は、何でも言い合える関係なんかじゃない。
前、本気で喧嘩した時は三十分以上正座をさせられ、何度も謝罪させられた。
記憶なんかほとんどないけど、お父さんにも悪いところはあったはず。
それなのに、…お父さんはさも自分が正しいように、一言「僕もごめん」とすら言ってくれなかった。
神様、強欲でごめんなさい。
でも私、お父さんと一緒にいたくないの。
無口で過保護なお母さんとも、
何も喋らずYouTubeばっかりの弟も、もう嫌なの。
平均収入でいいから、優しくなくていいから。
だからせめて───“親の愛”とはなにか、知りたいの。
“いいから”って言うこと自体が、高望みしてる、のかな。



