副音声のように横やりを入れてきた周防くんと、ぽつりと言葉を零す佛木くんにまた声を上げざるを得ない。

 実際そう……だとは、口が裂けても言えないけど。

 腹黒なのは周防くんのほうだと顔を背けた私に、伊狩くんがカラカラと笑いながら宥めてくる。

「はいはい、いくら月森が反応してくれるからってからかいすぎんなよ~。ちな俺、伊狩千鐘! クラスは周防と同じで、真幌とは幼馴染! そこそこによろしく~」

「……5組、佛木真幌。僕も、わざわざよろしくするつもりはないから」

 陽キャという言葉がぴったりな伊狩くんは、迷惑極まりないといった雰囲気を醸す佛木くんの肩を抱きながら二カッと笑顔を浮かべる。

 クセが強いけど、この中なら伊狩くんが一番話が通じそう……。

 個性的すぎる自己紹介をそう聞き流していると、ふとずっと静かな鳰くんのことが気になった。

 そういえば鳰くん、ここに来てから全然喋ってないような。

 不思議に首を捻って彼を探そうとすると、窓際にある本棚にもたれかかっている鳰くんを見つけた。

 彼の瞳はガッチリと閉じられていて、規則正しい呼吸が唇から漏れている。