「月森? おーい、月森~?」

「……っ、あ、えと、どう、したんですか」

「いや、入らねぇのかなって思って。なんかぼーっとしてるし、体調でも悪いのか?」

 それからどれだけ突っ立っていたんだろう。伊狩くんが私の目の高さで手をひらひらさせている時に、やっと現実に引き戻された。

「う、ううんっ、大丈夫……ごめんね、開けてたら寒いですよね」

 彼の言葉へ、噛みそうになりながらも返事をし急いで扉を閉める。

 そんな挙動不審の私に伊狩くんは不思議そうな表情を浮かべたけど、すぐに座っていた席へと戻った。

 私も同じように近くの席に腰を下ろし、ぐるぐると思考を巡らせる。

 まさかこのメンバーだけで、じゃないよね……無理だよ、こんな困り者たちと一緒に2時間もなんて。

 ……そう、多分これは夢だ。だってここまで綺麗に困り者たちだけ集められるなんて、逆に奇跡が起こっているとしか思えない。

「いたっ……」

 悪い夢なら覚めてほしい、そう願って頬を力強くつねる。

 けれど目を開けても同じ景色が広がるだけで、いつの間にか真隣の席にいた周防くんに笑われてしまった。