「それで何で私が選ばれたんですか」

「月森さんがそこにいたからと~、俺のファンじゃない子がいいな~って思って。月森さん、お友達の花厳さん以外には塩なんでしょ~?」

 ……塩、のつもりはないんだけどな。澄雨ちゃん以外の人と深く関わるつもりがないだけで。

 はーっと呼吸を整えながら、こっそり心の中で反論する。

 最終的に逃げてきたここは第三校舎二階。奇しくも講座のある選択教室1と同じ階だった。

 運がいいのか悪いのか……いや、巻き込まれた時点でよくないだろうけど。

「鳰くん、私もう行くから。じゃあね」

 額に汗を滲ませる私とは違って、涼しい顔で壁に寄り掛かる鳰くん。

 その場に存在するだけで圧倒的なオーラを放つ彼の傍に長くいた暁には、それこそファンにコテンパンにされてしまう。

 それに鳰くん、飄々としてて正直関わりづらいタイプだし……。

「帰るの~?」

「行かなきゃいけないところがあるんです」

「行かなきゃいけない? ……あ、もしかしてそれって……なんだっけ、なんちゃら講座?」