「宏名くんが六時間目までいるの超貴重~っ!」
誰かがそう言ったのを皮切りに、隣のクラス……澄雨ちゃんもいるクラスに人だかりが形成された。
今日は珍しく朝から放課後までいたらしい鳰くんを見たい人は学内だけでもたくさんいて、そこに学年や性別は関係ない。
わ、向こう側に行けない……どうしよう、これから講座なのに。
様子を見ながら廊下を出た私の視界には予想通りの絵が広がっていて、深めのため息を吐きそうになる。
仕方ない、遠回りになるけど反対側から行こう。あの人だかりをかき分けてまで抜ける勇気はない。
面倒だなぁという本音を仕舞いながら、素早くくるっと踵を返した。
「あ! ちょっと待って~!」
「っ⁉」
その私を引き留めた声が、ひとつ。
同時に左腕を掴まれ、声にならない悲鳴が出た。
やけにふわふわしたこの声……いやいや、まさかそんなわけ。
「月森さーんっ、一緒に逃げよ~!」
「え、ちょっ、はい……っ⁉」
否定したいのに、夢だと思いたいのに、かかる声が現実だと言っている。
誰かがそう言ったのを皮切りに、隣のクラス……澄雨ちゃんもいるクラスに人だかりが形成された。
今日は珍しく朝から放課後までいたらしい鳰くんを見たい人は学内だけでもたくさんいて、そこに学年や性別は関係ない。
わ、向こう側に行けない……どうしよう、これから講座なのに。
様子を見ながら廊下を出た私の視界には予想通りの絵が広がっていて、深めのため息を吐きそうになる。
仕方ない、遠回りになるけど反対側から行こう。あの人だかりをかき分けてまで抜ける勇気はない。
面倒だなぁという本音を仕舞いながら、素早くくるっと踵を返した。
「あ! ちょっと待って~!」
「っ⁉」
その私を引き留めた声が、ひとつ。
同時に左腕を掴まれ、声にならない悲鳴が出た。
やけにふわふわしたこの声……いやいや、まさかそんなわけ。
「月森さーんっ、一緒に逃げよ~!」
「え、ちょっ、はい……っ⁉」
否定したいのに、夢だと思いたいのに、かかる声が現実だと言っている。

