「ですよね」

 きっと、先生とかに聞いても同じ言葉が返ってくる。私なんかに分かるはずがない。

 二人して同じように悩んでしまい、ふーっと一息吐く。

 その時先輩が、ボソッとこんなことを呟いた。

「人はないものねだりをする。その人、もしかしたら月森さんが持ってるものが羨ましいんじゃないかな」

「ないものねだり、ですか……?」

「僕の考えだから参考程度にしてほしいんだけどね。……月森さんの話聞いた時、中学の頃の後輩を思い出したんだ。その子も助けを僕に求めてきたんだけど、結局助けられなかった。僕、逃げちゃったんだ。その子は僕を羨んでくれていたけど、上手く教えることができなくて……多分その子は今も、ないものねだりのままだと思うんだ」

 切なく顔を歪める先輩の横顔に、チクッと胸が痛む。さっきの私は、今の先輩のような表情をしていたのかもしれない。

『月森サンにはずっと努力しててほしいからねー』

 周防くんは確かにそう言った。先輩の考えをそこに組み込むと、周防くんは努力ができない……ってことになる、のかな。