「――……さん、…………ぶ?」

「……」

「つき……さん?」

「…………」

「……――月森さん!」

 っ……⁉

 優しい、けれどしっかりした力で肩を掴まれハッとする。

 まず一番に視界に入ってきたのは心配そうに顔を歪める剣菱先輩で、自分の今の状況を理解するのに数秒かかった。

 ……そうだ、今は挨拶運動の時間でいつも通りに挨拶をしていたはず。

『俺、月森サンに救われたいんだよね』

 それで私は……昨日の周防くんの言葉の意味を考えていて。

 でも分からなくて、ずっと同じことばかり考えてしまっていて。

「……すみません、先輩」

「もしかして、何か悩みごと?」

「まぁ、そんなところです」

 先輩は超がつくほどお人好しで心配性。今だって内容を話していないのに、眉が極限まで垂れ下がっている。

 先輩には迷惑かけたくないのに、ダメだな私。

 心の奥底で情けなく思いながらこれ以上変な気を遣わせないよう、にこっと笑顔を作る。

 けれど今回ばかりは逆効果だったらしく、先輩の心配に満ちた表情が私の顔を覗き込んできた。