「んーん、別に。やっぱ月森サンといるといい刺激になるなぁって思って」

「……その言い方、どうにかならないんですか」

 また、私に縋ってくるような言い方。それに何だかムッとして、たまらず言い返してしまう。

 すると周防くんは一瞬だけ鳩が豆鉄砲を食らったような表情になり、ふっと息を吐いた。

「“代わりに”とか“縋ってる”とか……思った?」

「っ……自覚、あるんですか」

「実際そうだから。俺、月森サンに救われたいんだよね」

 救われ、たい……?

 どういう意味、どうしてそんなこと――そう尋ねることは、戻ってきた先生に阻まれ叶わなかった。

「長い時間席外して悪かったな。プリントできたかー?」

「……っ、は、はい! できましたっ!」

 一体、周防くんは何を考えているのか。

 天才の思考回路は分からないと思っていたけど……多分、それだけじゃないような気がする。

 彼はもっと大きな、重たい黒を背負っているみたいだ。