『わ、わたしそんなことしてな――』

『しらばっくれないで!』

 遠目から見ていても、明らかに不公平な尋問だった。

 それを目の当たりにした時、正直関わりたくないなって思っていた。碌なことにならなさそうだから。

『先生はこのクラスを……ううん、この学年みんなが仲良くなってくれたらいいなって思っています』

 でも新学期が始まった時の、学年主任の先生が集会の時に言っていた言葉を思い出した。

 全員仲良くはできないと、私も分かっている。

 けれどあれはどう考えても度が過ぎている。真偽がどうであれ、大人数で一人に詰め寄るのは不公平だ。

『花厳さんが色目を使ったって証拠はあるの?』

 だから結局、突っ込んでしまった。

 女子たちは私が乱入して、まさか反論が来ると思ってなかったみたいで、答えられずに唇を噛んでいた。

 別に澄雨ちゃんを助けたいわけじゃなかった。見ていても気持ちよくないものだったから、声を上げただけ。

 クラスメイトと一線を引いて生活していた私は澄雨ちゃんと仲良くなる気はなかったけど、その日から澄雨ちゃんが私に構ってくるようになった。