「うん、気を付けて」

 やり取りを見守ってくれていた剣菱先輩に心配されて、申し訳ないような嬉しような感情を抱く。

 先輩だって人のこと言えないくらいイエスマンじゃないですか……なんて。

 思わず言いそうになった言葉を飲み込んで、先輩に一礼してから爪先を校舎へと向ける。

「――夕貴センパイってほんと、誰にでも優しいんだなぁ。……反吐が出る」

 秋風が吹き抜ける窓辺で、苦い顔をしていた周防くんに気付かずに。