……ルールを守らない人は苦手だ。その人の心が乱れていると思ってしまうから。

『こよねとママとパパはずっと一緒だぞ~っ!』

『ずっと?』

『えぇ。こよねが大きくなっても、パパとママがおじいちゃんおばあちゃんになっても一緒よ』

 ガランとした家の隅っこにある小さな仏壇の前で、今日も手を合わせる。

 ただの口約束。契約書なんてなければ音声だって録っていない、脆い言葉。

 それでも幼い私はそうなると信じて疑わなくて、言葉通り“ずっと一緒”だと思っていた。

 約束も言ってしまえばルール。無条件に縛ってくる残酷な呪い。

 だから約束を守らないお母さんもルールを蔑ろにする人も――いなくなればいいのに、って思う。



 髪型よし、ネクタイよし、スカートの丈よし……うん、大丈夫だ。

 近くの木に止まっているらしい雀のさえずりをBGMに、女子トイレの鏡の前で身なりを整える。

 心の乱れは見た目に出るから、ちゃんとしておかないと。

 もう一度だけ鏡を見つめ、女子トイレを出てから腕時計を見やる。

 挨拶運動までまだ15分もある……微妙だ。