「ねぇねぇ、白崎さんってさ〜」
「え〜マジ?保護者がホスト?」
三者懇談から一週間。
平和だった私の学校生活はガラガラと音を立てて崩れた。
「裏がありそうだよね〜......」
「実はパパ活やってたり?」
どこにいてもチクチク刺さる視線。ヒソヒソと噂話。
今、学校の女子の噂のトレンドランキング一位は、私の保護者が超絶イケメンの金髪ホストということだった。
「あー、もう!ウザイなぁ!!」
私の後ろに座っている美穂ちゃんはイライラのピークで爆発寸前。
「真宵の親が何だって良いでしょ!」
美穂ちゃんはそんな風に怒ってくれるけど......。
「真宵、大変そうだね」
女子達に質問攻めに合っていた変成くんが近づいてくる。
「楓くん!」
ちなみに変成くんの保護者役は欠席ということで個人懇談になっていた。
「ったく、人間の噂好きもめんどくさいなぁ......まぁ、あの馬鹿に保護者役は務まらなかったってだけだね」
「元を辿れば楓くんが変な提案するからじゃん」
「面白そうと思ったんだけどね〜」
ヘラヘラと反省する気ゼロの変成くんに、ふつふつと怒りが湧いてきた。
「もう知らない!変成くんのことなんか嫌い!!」
つい、大声で叫んでしまった。涙がポロポロ溢れ出る。
クラスの子達が私達に注目する。
変成くんは、まるで殴られたみたいに固まっていた。
「え、何、喧嘩?」
「変成って誰のこと?」
クラスの子達のヒソヒソ話を聞いた瞬間、私は教室を飛び出していた。
「ちょ、真宵!」
遠くから変成くんの声が聞こえたが、構わず無視をする。
階段を降りる足が震えている。
涙で視界がぐちゃぐちゃで、何度もつまずきそうになる。
その日、私は学校を早退した。

「少しは落ち着いたか?」
「うっ......うぅ......」
初江王が泣きながらしゃっくりを上げている私の背中をさすってくれる。
大きな手のひらが、安心する。
同い年なのに、初江王は年上の兄みたいに落ち着いてきて、支えてくれるのが伝わってくる。
「昼食は食べたか?」
その問いに首を横に振ると、「何か作ってくる」と言い残して台所に向かった。
台所からトントンという軽い音が聞こえてくる。
そのリズムが心地良くて、涙で火照った目元がじんわりと重くなる。
泣きすぎて、頭がぼんやりする。
毛布に包まって、ソファにもたれると肩に力が入らなくなって―――
まぶたがすぅっと落ちた。