嘘と欲求

【男二人は別にどうでもいい。一緒に撮られてる猫が無事かどうかだけ知りたい】

【イケメン殺人鬼じゃなくて、イケメンを狙って殺すブサイクが見てみたい。つまり、カケルが雨宮伊織を殺せばOK】

【異常性癖のある人は要注意。将来何か仕出かす可能性大】

【やっぱり男が多いね。犯罪者になるのって】

【猫を殺すようになったら本気で危機感持った方がいい。いつか絶対人間を殺すようになるから】

【カケルって奴の顔とか本名とか性癖とか、調べられる人いたら調べてほしい。雨宮伊織と同じで犯罪者の卵っぽいし、完全に孵化する前に潰しておくに越したことはないよ】

【学校名分かった。公園の場所と着ている制服からすると──】

 動悸がした。冷たい汗が額を伝った。事態は悪化していた。恐れていた展開が、早くも訪れてしまっていた。誹謗中傷の的が、翔真と伊織だけに留まらず、学校にまで広がろうとしていた。翔真の手に負えないところまで来てしまっていた。

 人生終了じゃんお前。誰かが放っていた暴言が、鈍器のような重量を伴って翔真の頭を殴った。鮮血が飛び散った。目の前が眩んだ。人生が終了した。

 後頭部を押さえた。髪の毛は濡れていない。手のひらを見た。真っ赤な血はついていない。翔真は死んでいない。殺されてもいない。流れる汗を拭う。ベタベタしていた。悪い想像ばかりが駆け巡る。ビクビクしていた。

 息がしづらくなるくらい極度の緊張状態に陥りながらも、最悪な事態を迎える前に伊織に会わなければという使命感が翔真を突き動かした。立ち止まっていては前には進めない。とにかく今は、誰よりも早く伊織と接触しなければ。

 随分と乾いてしまっている唇を引き込み、止まっていた足を踏み出した。頭の中は伊織でいっぱいだった。