翔真を含めたクラスメートの視線など意に介した様子もなく、さらさらと答えまで書き終えた伊織がチョークを元の位置に戻した。黒板が見えるように横へずれる。そこで翔真はハッと気づいた。消えかけていた悶々が、みるみるうちに克明になっていく。
「正解だ。素晴らしい」
翔真の時と同じ褒め方で丸をつけた教師が、翔真の中に再び表れた悶々の元凶を一旦隠してくれたが、文字通り、一旦だ。すぐに姿を晒した。新たに増えた筆跡によって、翔真の下手くそな筆跡が更に悪目立ちする。静かに席へと戻る伊織の字は、翔真とは比べ物にならないほど丁寧だった。翔真はますます自分の書いた字を消してほしくなった。消してくれ、早く。
自身のあまりの字の下手さに唸ってしまいそうになりながらも、翔真は伊織が解いた問題をノートに書き写していった。黒板の余白はもう少なくなっている。そろそろ消してくれるかもしれない。そう願ったところで、教師が黒板消しを掴むのを目にする。ここら辺はもう消していいかと生徒に確認し、数名の返事を貰ってから消していく。翔真が解いた問題も消していく。綺麗さっぱりなくなったのを見て、ようやく解放された気分になった。
少しだけ心に余裕が出てきた。翔真はSNSに投稿する呟きの二つ目の候補として、親友は顔だけでなく字まで整っている、と記憶の中にメモをする。いいねが貰えるような内容ではないことは重々承知しているが、何でも発信してみなければ分からない。何か反応があるかもしれない。確証のない、かもしれないに賭けるしかなかった。
翔真は黒板にまだ残されている伊織の字を、なぞるように目で追った。教師の説明を耳から耳へ聞き流しながら式の最後までを見た後、まるで引き寄せられるように伊織本人を盗み見た。我ながら気持ちの悪い行動だ。しかし、よく見なければ分からないような小さな気づきすら見逃したくないため、じっくり観察してしまうのは致し方ないことである。翔真は無理やり自分を正当化する。
「正解だ。素晴らしい」
翔真の時と同じ褒め方で丸をつけた教師が、翔真の中に再び表れた悶々の元凶を一旦隠してくれたが、文字通り、一旦だ。すぐに姿を晒した。新たに増えた筆跡によって、翔真の下手くそな筆跡が更に悪目立ちする。静かに席へと戻る伊織の字は、翔真とは比べ物にならないほど丁寧だった。翔真はますます自分の書いた字を消してほしくなった。消してくれ、早く。
自身のあまりの字の下手さに唸ってしまいそうになりながらも、翔真は伊織が解いた問題をノートに書き写していった。黒板の余白はもう少なくなっている。そろそろ消してくれるかもしれない。そう願ったところで、教師が黒板消しを掴むのを目にする。ここら辺はもう消していいかと生徒に確認し、数名の返事を貰ってから消していく。翔真が解いた問題も消していく。綺麗さっぱりなくなったのを見て、ようやく解放された気分になった。
少しだけ心に余裕が出てきた。翔真はSNSに投稿する呟きの二つ目の候補として、親友は顔だけでなく字まで整っている、と記憶の中にメモをする。いいねが貰えるような内容ではないことは重々承知しているが、何でも発信してみなければ分からない。何か反応があるかもしれない。確証のない、かもしれないに賭けるしかなかった。
翔真は黒板にまだ残されている伊織の字を、なぞるように目で追った。教師の説明を耳から耳へ聞き流しながら式の最後までを見た後、まるで引き寄せられるように伊織本人を盗み見た。我ながら気持ちの悪い行動だ。しかし、よく見なければ分からないような小さな気づきすら見逃したくないため、じっくり観察してしまうのは致し方ないことである。翔真は無理やり自分を正当化する。



