「よし、じゃあ、この問題を、今度は誰に解いてもらおうか」
心底しょうもないことで悶々としている翔真の耳に、誰かを当てようとする教師の声が聞こえた。僅かに顔を持ち上げ、できるだけ頭を動かさずに周りを見回す。誰も彼もが微妙に目を逸らしていた。当てられたくないのだ。今日は何日だから出席番号何番といった王道の当て方をしない、完全ランダム方式で指名する教師のため、誰一人として安心できない。当たる確率は全員平等だ。翔真は先程指名されたため、選択肢からは外れているはずである。連続で当てられたら一生恨んでしまいそうだった。
翔真はきょろきょろしていると思われないよう姿勢を低くし、板書を取るふりをしながら目だけで伊織を一瞥した。伊織は平然としている。当てられるかもしれない、当てられるのは嫌だ、といった不安や心配の感情が一切ないように見えた。余裕がある。そこがまたクールだ。イケメンだ。翔真はSNSに投稿する呟きの候補として、脳内の片隅にメモした。親友はいつでも余裕のあるイケメン。
「それじゃあ、雨宮、これはお前に任せた」
よく通るはきはきとした声でその名を呼んだ教師は、責任重大な任務でもお願いするかのような言葉で伊織を指名した。その瞬間、近くの席の人が安堵したように力を抜く気配がした。いつの間にか張り詰めていた空気が弛緩したようにも思えた。
翔真に続き、多くの人が避けたいと思っている事象の餌食となった伊織は、しかし嫌そうな素振りは見せず素直に返事をして黒板の前へ移動した。注目を浴びている。翔真はここぞとばかりに遠慮もせず見つめる。周りも同じことをしている。今は決して不自然ではない。その他大勢に溶け込めている。
伊織がチョークを手に取った。横線二本の等号を書き、迷いなく問題を解いていく。握っているチョークは短めだ。翔真が使用した真っ二つになったチョークの片割れか。もしくはその相方か。はたまた別のチョークか。知ったところで何の得もない情報だが、塵も積もれば山となる、だ。親友にしている伊織に関することであれば、些細なことでも知りたかった。
心底しょうもないことで悶々としている翔真の耳に、誰かを当てようとする教師の声が聞こえた。僅かに顔を持ち上げ、できるだけ頭を動かさずに周りを見回す。誰も彼もが微妙に目を逸らしていた。当てられたくないのだ。今日は何日だから出席番号何番といった王道の当て方をしない、完全ランダム方式で指名する教師のため、誰一人として安心できない。当たる確率は全員平等だ。翔真は先程指名されたため、選択肢からは外れているはずである。連続で当てられたら一生恨んでしまいそうだった。
翔真はきょろきょろしていると思われないよう姿勢を低くし、板書を取るふりをしながら目だけで伊織を一瞥した。伊織は平然としている。当てられるかもしれない、当てられるのは嫌だ、といった不安や心配の感情が一切ないように見えた。余裕がある。そこがまたクールだ。イケメンだ。翔真はSNSに投稿する呟きの候補として、脳内の片隅にメモした。親友はいつでも余裕のあるイケメン。
「それじゃあ、雨宮、これはお前に任せた」
よく通るはきはきとした声でその名を呼んだ教師は、責任重大な任務でもお願いするかのような言葉で伊織を指名した。その瞬間、近くの席の人が安堵したように力を抜く気配がした。いつの間にか張り詰めていた空気が弛緩したようにも思えた。
翔真に続き、多くの人が避けたいと思っている事象の餌食となった伊織は、しかし嫌そうな素振りは見せず素直に返事をして黒板の前へ移動した。注目を浴びている。翔真はここぞとばかりに遠慮もせず見つめる。周りも同じことをしている。今は決して不自然ではない。その他大勢に溶け込めている。
伊織がチョークを手に取った。横線二本の等号を書き、迷いなく問題を解いていく。握っているチョークは短めだ。翔真が使用した真っ二つになったチョークの片割れか。もしくはその相方か。はたまた別のチョークか。知ったところで何の得もない情報だが、塵も積もれば山となる、だ。親友にしている伊織に関することであれば、些細なことでも知りたかった。



