嘘と欲求

 SNSには、見たこともない数の通知が届いていた。タップすると、見たこともないアイコンがずらりと並んでいた。一つの投稿にいいねが集中していた。拡散されていた。返信も引用もされていた。何がどうなっているのか頭の整理が追いつかなかったが、これだけは理解できた。

 バズっている。翔真のした投稿が、バズっている。爆発的に伸びている。注目を浴びているのは、本命だった伊織と猫の投稿だ。伸びないのはおかしいと燻っていたものに、どこかの誰かによって光を当てられ、結果、翔真が妄想しまくった展開となっていた。

 寝る前までは凍ったように静止していた投稿だったのに、寝ている間に熱を与えられ、気づけば溶解していた。寝て起きたら、世界がひっくり返っていたかのようだった。自分だけが、ひっくり返る前の世界に取り残されているかのようだった。

 呆然と眺めている間にも、通知は届き続ける。いいね。拡散。返信。いいね。拡散。返信。いいね。拡散。返信。いいね。拡散。引用。いいね。拡散。引用。いいね。拡散。引用。いいね。拡散。いいね。拡散。いいね。拡散。いいね。いいね。いいね。

 止まらない通知。人生で初めての経験。いいね。いいね。いいね。大量のいいねが、求めていたいいねが、次から次へと自分の手元に届いている。いいね。いいね。いいね。いいね。いいね。止まらない止まらない止まらない。

 とてつもなく大きな感情が雪崩れ込んできた。口元が緩む。無敵な気分になる。何かが足りなくて空いていた穴が一気に埋まっていく心地良さを感じる。快感に近かった。あまりの多幸感に指先が震えた。

 いいね。いいね。いいね。いいね。いいね。止まらない。翔真の興奮も、止まらない。うちに秘めていた醜い承認欲求が、みるみるうちに満たされていく。気持ち良さに溺れてしまいそうになりながら、翔真はいくつも届いている返信と引用に目を向ける。