嘘と欲求

 絶対に、低空飛行などしてはいけない。絶対に、伸びないといけない。伊織はイケメンなのだから。イケメンは伸びると相場が決まっているのだから。伸びないのはおかしい。どこからどう見ても伊織はイケメンなのに。おかしい。おかしい。こんなのおかしい。絶対におかしい。

 まだ世間に見つかっていないのだと気長に待つつもりでいながら、数字が増加していない現状を目の前にすると、八つ当たりのような不満が溢れてしまった。蓋をして押さえ込もうとしても、ぐつぐつと煮立つ焦りと苛立ちが隙間から堂々と顔を出す。

 どうして。どうして。どうして。伊織はこんなにもイケメンなのに。どうして。どうして伸びない。いいねが増えない。

 翔真は感情のままに画面に指を滑らせた。スマホを触るのはちょっとだけの予定でいたが、守れたことなどない通り、ちょっとだけになりそうになかった。指は止まらなかった。画面にのめり込むように動かした。

【伊織の画像が全然伸びない伸びると思ったのに何でおかしい普通にイケメンなのにおかしい伊織が埋もれるわけない埋もれちゃいけない誰でもいいからもっと反応してほしいイケメンだとかかっこいいだとか言ってほしい伊織はイケメンなのに親友はイケメンなのに俺にはイケメンな親友がいるのにこのまま多くの人の目に触れないまま消えていくなんて考えられない伸びろ伸びろ伸びろ伊織はこんなところで燻ってちゃいけない伸びろ伸びろ伸びろ伊織はどう考えてもめちゃくちゃイケメンで俺はそんな伊織の親友でもっと羨ましがってくれたらいいのにこんなイケメンと親友なんて羨ましいとか何でもいいからもっともっといいねが欲しい伊織にはもっといいねがつかないといけない納得できない伊織のかっこよさといいねの数が全く釣り合ってないあり得ないおかしいおかしいおかしいおかしい絶対おかしい】

 醜い真情を吐露した勢いのまま投稿を押した。スマホは無反応だった。もう一度押した。無反応だった。画面を見ていながらどこも見ていなかった目が不意に正気に戻った。

 字数制限を大幅にオーバーしている。オーバー分の文字の背景が赤くなっている。危険信号の赤だった。画面は文字だらけだった。句読点のない非常に読みにくい文章だった。まるで呪文のようだった。