弄ばれている気がした。これなら、気持ちの悪い生物でも見るような目を向けられた方がましである。寧ろ、そのようなリアクションになるのが普通なのではないか。
地道に伊織の情報を得ているはずなのに、訳の分からない謎が増えてしまった。付き纏われているのに気づいていながら、何の感情も表に出さないのが逆に恐ろしく感じてしまう。伊織の考えが読めない。
「『殺戮にいたる病』は、初心者にはハードル高めの本だと思うよ」
半端な形で途切れた会話を、脈絡のない言葉で伊織が繋いだ。いきなりすぎて咄嗟には喋れない翔真を置いて、伊織は文庫売り場の正面へ向かう。商品に視線を落とし、一冊の本を手にするとすぐに戻ってきた。伊織の言動についていけずにいる翔真の前に、マイペースに事を進める伊織が本を差し出す。頭に疑問符が大量生産される。
「これ、おすすめ」
「え……」
「こっちの方が、本読むの慣れてなくても読みやすいと思う」
押し付けられ、受け取らされた。翔真が状況を把握する間もなく、もう用はないとばかりに伊織はさっさと姿を消した。今度はいくら待っても戻ってこなかった。店を出たのかもしれない。
渡された本を見た。黄色が目立つ明るい表紙だった。主人公と思しきキャラクターが中心に描かれている。『殺戮にいたる病』と違って、タイトルは簡単に読めた。『成瀬は天下を取りにいく』
読めるタイトルだったものの、翔真は人知れず困惑してしまった。本は読まない。読めない。羅列された活字を見ると酔ってしまいそうになる。
でも、これは、この本は、情報収集している伊織からおすすめだと差し出された本だ。全くもって理由は分からないが、間違いなく伊織に勧められた本だ。翔真の中で、伊織は親友の設定だ。その相手から推薦された本を、読む読まないは別として、買わないのはどうなのか。
地道に伊織の情報を得ているはずなのに、訳の分からない謎が増えてしまった。付き纏われているのに気づいていながら、何の感情も表に出さないのが逆に恐ろしく感じてしまう。伊織の考えが読めない。
「『殺戮にいたる病』は、初心者にはハードル高めの本だと思うよ」
半端な形で途切れた会話を、脈絡のない言葉で伊織が繋いだ。いきなりすぎて咄嗟には喋れない翔真を置いて、伊織は文庫売り場の正面へ向かう。商品に視線を落とし、一冊の本を手にするとすぐに戻ってきた。伊織の言動についていけずにいる翔真の前に、マイペースに事を進める伊織が本を差し出す。頭に疑問符が大量生産される。
「これ、おすすめ」
「え……」
「こっちの方が、本読むの慣れてなくても読みやすいと思う」
押し付けられ、受け取らされた。翔真が状況を把握する間もなく、もう用はないとばかりに伊織はさっさと姿を消した。今度はいくら待っても戻ってこなかった。店を出たのかもしれない。
渡された本を見た。黄色が目立つ明るい表紙だった。主人公と思しきキャラクターが中心に描かれている。『殺戮にいたる病』と違って、タイトルは簡単に読めた。『成瀬は天下を取りにいく』
読めるタイトルだったものの、翔真は人知れず困惑してしまった。本は読まない。読めない。羅列された活字を見ると酔ってしまいそうになる。
でも、これは、この本は、情報収集している伊織からおすすめだと差し出された本だ。全くもって理由は分からないが、間違いなく伊織に勧められた本だ。翔真の中で、伊織は親友の設定だ。その相手から推薦された本を、読む読まないは別として、買わないのはどうなのか。



