伊織が異変を覚えた際に読んでいた本と同じ本を、翔真は今持っている。翔真は本を読まない。此奴は本を読む人間ではないと、恐らく伊織も察している。偶然にしては、出来すぎている。故に、伊織は翔真への疑いを深めているのだろう。
もう誤魔化しは効かないと分かっていながらも、意固地になっている翔真は形だけでも足掻いてみせた。
「だ、だから、なんだって言うんだよ。俺はちょうど、この本が気になっただけであって」
「本、読まないよね」
「よ、読む。読むし。学校では読んでないだけだし」
「じゃあ、最近読んだ本教えて」
グサッと刺された。一瞬で言葉が詰まった。黒目が右へ左へうろうろする。最近読んだ本。そんなものはない。一ページも読んでいないのだから。
伊織に痛いところを突き刺され、翔真は血だらけになった。無い知恵を絞って適当なタイトルを作り上げようにも、何一つ浮かんでこない。目に入った本のタイトルを引っ掴んで晒し上げようにも、内容にまで踏み込まれたら答えられない。
本を読む人であれば簡単に答えられるはずの問いでも、一冊も読んでいない翔真には難問だった。挽回できる策を見出せない。見事なまでの撃沈である。
「嘘吐くの下手くそだね。外したカバーを付け直すのも下手くそだね」
言葉だけで翔真を追い込んだ伊織の口から落ちたのは、シンプルな暴言だった。翔真は頭に血が昇りそうになる。自覚していても、いざ他人の口から言われると腹が立つ。言い返してやりたいと喉の奥に熱が集中したが、舌が固まったように動かず結局声にはならなかった。
押し寄せる負の感情で身体を熱くさせる翔真に気づきもしない伊織は、下手くそだと貶すだけ貶して口を閉ざした。本に触った犯人は翔真だと断定している様子なのに、翔真の行動を咎める気配がない。ただねっとりとした嫌な感じを残してくるのみである。
もう誤魔化しは効かないと分かっていながらも、意固地になっている翔真は形だけでも足掻いてみせた。
「だ、だから、なんだって言うんだよ。俺はちょうど、この本が気になっただけであって」
「本、読まないよね」
「よ、読む。読むし。学校では読んでないだけだし」
「じゃあ、最近読んだ本教えて」
グサッと刺された。一瞬で言葉が詰まった。黒目が右へ左へうろうろする。最近読んだ本。そんなものはない。一ページも読んでいないのだから。
伊織に痛いところを突き刺され、翔真は血だらけになった。無い知恵を絞って適当なタイトルを作り上げようにも、何一つ浮かんでこない。目に入った本のタイトルを引っ掴んで晒し上げようにも、内容にまで踏み込まれたら答えられない。
本を読む人であれば簡単に答えられるはずの問いでも、一冊も読んでいない翔真には難問だった。挽回できる策を見出せない。見事なまでの撃沈である。
「嘘吐くの下手くそだね。外したカバーを付け直すのも下手くそだね」
言葉だけで翔真を追い込んだ伊織の口から落ちたのは、シンプルな暴言だった。翔真は頭に血が昇りそうになる。自覚していても、いざ他人の口から言われると腹が立つ。言い返してやりたいと喉の奥に熱が集中したが、舌が固まったように動かず結局声にはならなかった。
押し寄せる負の感情で身体を熱くさせる翔真に気づきもしない伊織は、下手くそだと貶すだけ貶して口を閉ざした。本に触った犯人は翔真だと断定している様子なのに、翔真の行動を咎める気配がない。ただねっとりとした嫌な感じを残してくるのみである。



