翔真の集中力が欠落していても、授業は滞りなく進んでいく。あからさまに授業を妨害したり、堂々と眠りについたりするような、極端に不真面目な生徒はこのクラスにはいなかった。伊織も真面目に受けている。
伊織について入手している数少ない情報の一つに、クラスでも学年でも三本の指に入るくらいに成績が良いというのがあった。イケメンで、尚且つ聡明。ますます敷居が高く感じる。優秀な伊織と違って、翔真は至って平均的な成績だ。良くもなく、悪くもない。伊織と同じくらい勉強ができていれば、話しかける難易度は下がったのだろうか。
話しかける、と考えて、話しかけたいのか、自分は、と翔真は自問自答した。吐いた嘘を本当にしたいのか。伊織と現実でも親友になりたいのか。
無理に決まっている。伊織と親友になれるとは思えない。頭の偏差値も、顔の偏差値も、差がありすぎる。おまけに伊織との共通点も見つけられない。話題がない。近づけない。親友は疎か、友人にすらなれる気がしない。
それでも、翔真の分身でもあるカケルという人間には、イケメンの親友がいるのだ。伊織が親友なのだ。翔真自らがそのような設定にしたのだ。たった一つでも、貰えば有頂天となるいいねのために。
翔真は黒板に書かれた数式を、機械的に板書した。教師の話はほとんど頭に入っておらず、意識は完全に伊織の方へ向いていた。伊織が気になって、伊織を知りたくて、授業に身が入らない。
隣の人に怪しく思われたばかりなのに、我慢できず前屈みになった。覗き込むようにして伊織を見つめてしまう。教室に拘束されている状態で得られる情報など高が知れているのに。
「西原、さっきからそわそわしてどうした? 集中しろよ」
不意に名を呼ばれ、ビクッと肩が揺れた。まるきり聞いていなかった教師の声だった。厳しく咎められたわけではないのに、余所見をしていた翔真は悪戯をして叱責された子供のように萎縮してしまう。注意力が散漫になっている様は、教壇から見ると目立っていたのだろう。
伊織について入手している数少ない情報の一つに、クラスでも学年でも三本の指に入るくらいに成績が良いというのがあった。イケメンで、尚且つ聡明。ますます敷居が高く感じる。優秀な伊織と違って、翔真は至って平均的な成績だ。良くもなく、悪くもない。伊織と同じくらい勉強ができていれば、話しかける難易度は下がったのだろうか。
話しかける、と考えて、話しかけたいのか、自分は、と翔真は自問自答した。吐いた嘘を本当にしたいのか。伊織と現実でも親友になりたいのか。
無理に決まっている。伊織と親友になれるとは思えない。頭の偏差値も、顔の偏差値も、差がありすぎる。おまけに伊織との共通点も見つけられない。話題がない。近づけない。親友は疎か、友人にすらなれる気がしない。
それでも、翔真の分身でもあるカケルという人間には、イケメンの親友がいるのだ。伊織が親友なのだ。翔真自らがそのような設定にしたのだ。たった一つでも、貰えば有頂天となるいいねのために。
翔真は黒板に書かれた数式を、機械的に板書した。教師の話はほとんど頭に入っておらず、意識は完全に伊織の方へ向いていた。伊織が気になって、伊織を知りたくて、授業に身が入らない。
隣の人に怪しく思われたばかりなのに、我慢できず前屈みになった。覗き込むようにして伊織を見つめてしまう。教室に拘束されている状態で得られる情報など高が知れているのに。
「西原、さっきからそわそわしてどうした? 集中しろよ」
不意に名を呼ばれ、ビクッと肩が揺れた。まるきり聞いていなかった教師の声だった。厳しく咎められたわけではないのに、余所見をしていた翔真は悪戯をして叱責された子供のように萎縮してしまう。注意力が散漫になっている様は、教壇から見ると目立っていたのだろう。



