高校の教材は何かと多い。その日に受ける授業で必要なものを全て押し込むのは困難だ。目の前の机の中にしまわれているのは、二、三教科分くらいだろうか。他は鞄に入ったままなのだろう。常に入れ替えながら、上手く机を使っているのかもしれない。入らなくなる限界まで押し込みがちな翔真とは大違いである。
ゆとりのある机の中に、そっと手を差し入れた。ただ覗くだけでは満足できない。欲に急かされるがまま、翔真は適当なノートを引っ張り出した。表紙に流麗な文字で、数学、と書かれている。
当たり前のようにページを開き、中に目を通す。過去に黒板で見た字と同じ字が、ノートにも並んでいた。翔真のノートよりも圧倒的に分かりやすくて見やすかった。頭の良い人は、ノートの取り方も違うようだ。
翔真は伊織の筆跡を、意味もなく指でなぞった。少しだけ凹凸があり、確かに伊織はここに直接シャーペンを走らせたのだと実感した。シャーペンはきっと、翔真が以前書店で買ったものと同じものだろう。
そこでふと、これだと勢い込んで購入したシャーペンは、本当に伊織と揃いのものなのかどうか確認したくなった。いつも遠くから眺めていたため、未だに現物をしっかりとは目にしていないのである。
音を立てず静かにノートを閉じた。元あった場所にゆっくりと差し戻す。短く息を吐いてから、次はペンケースに触れようとした。その時、あるものが視界に映り込んだ。一気に意識を奪われる。瞳孔が開く。目が離せなくなる。
手が勝手に動いた。シャーペンのことが頭から吹き飛んでいた。探し求めていたものをようやく見つけ出したみたいに、体温が急激に上がっていた。全身が興奮に包まれ始めていた。
そこにあったのは、文庫本だった。伊織が休憩時間の度に読んでいる文庫本だった。翔真は不意打ちで文庫本を発見した。ペンケースに寄り添うようにしてそこに存在していた。
本来ペンケースの感触を覚えるはずだった指先が、紙の感触を拾った。カバーである。頭に血が昇りそうになった。憎きカバーごと乱暴に引っ掴んで引っ張り出したい衝動に駆られた。
ゆとりのある机の中に、そっと手を差し入れた。ただ覗くだけでは満足できない。欲に急かされるがまま、翔真は適当なノートを引っ張り出した。表紙に流麗な文字で、数学、と書かれている。
当たり前のようにページを開き、中に目を通す。過去に黒板で見た字と同じ字が、ノートにも並んでいた。翔真のノートよりも圧倒的に分かりやすくて見やすかった。頭の良い人は、ノートの取り方も違うようだ。
翔真は伊織の筆跡を、意味もなく指でなぞった。少しだけ凹凸があり、確かに伊織はここに直接シャーペンを走らせたのだと実感した。シャーペンはきっと、翔真が以前書店で買ったものと同じものだろう。
そこでふと、これだと勢い込んで購入したシャーペンは、本当に伊織と揃いのものなのかどうか確認したくなった。いつも遠くから眺めていたため、未だに現物をしっかりとは目にしていないのである。
音を立てず静かにノートを閉じた。元あった場所にゆっくりと差し戻す。短く息を吐いてから、次はペンケースに触れようとした。その時、あるものが視界に映り込んだ。一気に意識を奪われる。瞳孔が開く。目が離せなくなる。
手が勝手に動いた。シャーペンのことが頭から吹き飛んでいた。探し求めていたものをようやく見つけ出したみたいに、体温が急激に上がっていた。全身が興奮に包まれ始めていた。
そこにあったのは、文庫本だった。伊織が休憩時間の度に読んでいる文庫本だった。翔真は不意打ちで文庫本を発見した。ペンケースに寄り添うようにしてそこに存在していた。
本来ペンケースの感触を覚えるはずだった指先が、紙の感触を拾った。カバーである。頭に血が昇りそうになった。憎きカバーごと乱暴に引っ掴んで引っ張り出したい衝動に駆られた。



