数分前まで他人が着用していた衣服の匂いを無断で嗅ぐ。変態チックな危うい行動をしている自覚はあった。それでも、歯止めが効かなかった。やめられなかった。若干汗の混じった伊織の制服の匂いは、癖になりそうなものだった。
その人を象徴する匂いによって更なる欲求が刺激された翔真は、隙間を埋めるようにシャツを鼻に押し付けた。汚れた身体の内側を綺麗にするかの如く、そこから香る伊織の匂いを目一杯取り込む。吸っては吐いて。吐いては吸って。そうして嗅げば嗅ぐほど、理性を失くしていくようだった。
気の済むまで匂いを嗅いで、シャツから顔を離す。はあ、と熱い吐息が漏れた。人の服の匂いを思い切り嗅ぐなど初めての経験だ。高揚感を覚えつつも満足した翔真は、カッターシャツを大雑把に元に戻した。
次は机の中を探ろうと、翔真は椅子の背に片手をつきながら膝を折った。すると、ポキッと小枝が折れるような音が鳴った。ドキッと胸が跳ね、翔真は動きを止める。膝の音だった。翔真以外の誰かが出した音ではない。
意図しないタイミングで鳴った音に敏感に反応してしまった翔真は、元々潜めていた息を更に潜めた。きょろきょろと辺りを見回す。強迫観念に囚われたように、教室に誰もいないことを何度も何度も確認する。廊下に誰の気配もないことも、神経を張り巡らせてサーチする。
いない。いない。誰もいない。ここには誰もいない。誰かが来る気配もない。間違いない。
翔真は慎重に息を吐き出した。普段は気にもしない微音が、今は命取りとなってしまうのではないか。懸念するあまり全身が強張る翔真は、人知れず切迫していた。悪事を働いている意識があるからだったが、その感情を押さえ込んで捩じ伏せるほどに情報欲が飢えていた。
屈んだことで必然的に距離が近くなった伊織の制服。息を吸う度に嗅覚を刺激する匂いがまた、翔真の理性をじりじりと蝕んでいくようだった。
気を取り直した翔真は、なるべく音を立てずに椅子を引いた。そろそろと中を覗き込む。外からは見られなかった場所には、伊織の教科書やノートが余裕を持って入れられていた。
その人を象徴する匂いによって更なる欲求が刺激された翔真は、隙間を埋めるようにシャツを鼻に押し付けた。汚れた身体の内側を綺麗にするかの如く、そこから香る伊織の匂いを目一杯取り込む。吸っては吐いて。吐いては吸って。そうして嗅げば嗅ぐほど、理性を失くしていくようだった。
気の済むまで匂いを嗅いで、シャツから顔を離す。はあ、と熱い吐息が漏れた。人の服の匂いを思い切り嗅ぐなど初めての経験だ。高揚感を覚えつつも満足した翔真は、カッターシャツを大雑把に元に戻した。
次は机の中を探ろうと、翔真は椅子の背に片手をつきながら膝を折った。すると、ポキッと小枝が折れるような音が鳴った。ドキッと胸が跳ね、翔真は動きを止める。膝の音だった。翔真以外の誰かが出した音ではない。
意図しないタイミングで鳴った音に敏感に反応してしまった翔真は、元々潜めていた息を更に潜めた。きょろきょろと辺りを見回す。強迫観念に囚われたように、教室に誰もいないことを何度も何度も確認する。廊下に誰の気配もないことも、神経を張り巡らせてサーチする。
いない。いない。誰もいない。ここには誰もいない。誰かが来る気配もない。間違いない。
翔真は慎重に息を吐き出した。普段は気にもしない微音が、今は命取りとなってしまうのではないか。懸念するあまり全身が強張る翔真は、人知れず切迫していた。悪事を働いている意識があるからだったが、その感情を押さえ込んで捩じ伏せるほどに情報欲が飢えていた。
屈んだことで必然的に距離が近くなった伊織の制服。息を吸う度に嗅覚を刺激する匂いがまた、翔真の理性をじりじりと蝕んでいくようだった。
気を取り直した翔真は、なるべく音を立てずに椅子を引いた。そろそろと中を覗き込む。外からは見られなかった場所には、伊織の教科書やノートが余裕を持って入れられていた。



