翔真の思考がカケルの独言として発信される。しばらく文字を見つめた。画面は何も変わらない。意味のない行動だった。フォロワーの多いアカウントのように、即座に大量のいいねがつく夢みたいな現象など起きるはずもなかった。
翔真はスマホの電源を切り、制服のポケットに押し込んだ。椅子の背凭れに身を預ける。顔を上げ、黒板の上の掛け時計の長針を見つめた。次の授業まであと二分。
友人同士で固まって話していた生徒が徐々に自席へと戻っていく。眺めていた長針に秒針が重なった。一秒後には長針を追い越していく秒針。翔真は次に秒針を追いかけた。一定の速度を保ったまま円を描く秒針が、時計のてっぺんを示す。あと一分。
時間の経過を視覚的に捉えているせいか、妙に萎えて冷静になった。自分は一体何をしているのだろう。途方もないほどの虚無を覚えた。馬鹿みたいに時計の針を眺めていることではなく、SNSに嘘の投稿をしたことに対してだった。熱が冷めるといつも思う。嘘を吐いてまで、自分は一体。
チャイムが鳴る直前であっても本に食いついている読書家の伊織は、一ミリたりとも翔真の親友ではなかった。SNSでいいねを貰うための策として、翔真が勝手に親友にしているだけの、ただのクラスメートであった。翔真は伊織と話したことすらない。親友なのは全くの嘘である。イケメンなのは本当で、親友なのは嘘っぱちなのである。
伊織が本に栞を挟んだ。キリのいいところまで読めたらしい。閉じた本を大事そうに机の中にしまう。どんな本を読んでいるのかと表紙を盗み見て情報を得ようとしたが、本には厳重にカバーが付けられていた。
だろうな、と翔真は鼻から息を吐き出した。伊織がカバーなしで本を読んでいるのを見たことがない。これから見ることもないだろう。伊織に直接聞いて答えてもらう以外で知る方法はなさそうだった。
仮にもし、伊織が本にカバーを付けていなかったとしても、残念ながら前と後ろで席も離れている。目を凝らしてみても、表紙の全体の色味くらいしか分からないに違いない。もしくは、何一つ分からないか。本を閉じて机にしまう一瞬の間だ。希望は限りなく低かった。
翔真はスマホの電源を切り、制服のポケットに押し込んだ。椅子の背凭れに身を預ける。顔を上げ、黒板の上の掛け時計の長針を見つめた。次の授業まであと二分。
友人同士で固まって話していた生徒が徐々に自席へと戻っていく。眺めていた長針に秒針が重なった。一秒後には長針を追い越していく秒針。翔真は次に秒針を追いかけた。一定の速度を保ったまま円を描く秒針が、時計のてっぺんを示す。あと一分。
時間の経過を視覚的に捉えているせいか、妙に萎えて冷静になった。自分は一体何をしているのだろう。途方もないほどの虚無を覚えた。馬鹿みたいに時計の針を眺めていることではなく、SNSに嘘の投稿をしたことに対してだった。熱が冷めるといつも思う。嘘を吐いてまで、自分は一体。
チャイムが鳴る直前であっても本に食いついている読書家の伊織は、一ミリたりとも翔真の親友ではなかった。SNSでいいねを貰うための策として、翔真が勝手に親友にしているだけの、ただのクラスメートであった。翔真は伊織と話したことすらない。親友なのは全くの嘘である。イケメンなのは本当で、親友なのは嘘っぱちなのである。
伊織が本に栞を挟んだ。キリのいいところまで読めたらしい。閉じた本を大事そうに机の中にしまう。どんな本を読んでいるのかと表紙を盗み見て情報を得ようとしたが、本には厳重にカバーが付けられていた。
だろうな、と翔真は鼻から息を吐き出した。伊織がカバーなしで本を読んでいるのを見たことがない。これから見ることもないだろう。伊織に直接聞いて答えてもらう以外で知る方法はなさそうだった。
仮にもし、伊織が本にカバーを付けていなかったとしても、残念ながら前と後ろで席も離れている。目を凝らしてみても、表紙の全体の色味くらいしか分からないに違いない。もしくは、何一つ分からないか。本を閉じて机にしまう一瞬の間だ。希望は限りなく低かった。



