伊織を知る重要な情報を得られそうで、翔真は気分が持ち上がっていた。期待に胸が膨らみ、思わず表情筋が緩んでしまいそうになる。一人で歩きながらにやにやするなど不審者認定されてしまうかもしれない。
翔真は僅かに下を向き、唇をギュッと引き結んで必死に普通を装った。何も考えずにのんびりと帰っている男子高校生を演じる。脳内では期待感を煽る出囃子のようなものが永遠に鳴り響いていたが、表面には噯にも出さないよう努めた。
翔真は意図せず口が開かないよう強く閉じたまま目を上げた。意識したせいか、いつもは気にも留めない書店の看板が、どんと視界に大きく映り込んだ。
一台の車が左折し、駐車場へ入っていく。数メートル先を歩く伊織が、もう一箇所ある出入り口から駐車場に足を踏み入れる。思った通りだと翔真はほくそ笑みそうになったが、書店の隣にはドラッグストアがあった。もしかしたらそちらの可能性もあるのではないかと、先走る感情に慌ててセーブをかけたものの、高校生が放課後にわざわざ寄る店ではないだろう。そう結論づけ、脳裏を過った思考を即座に打ち消した。
伊織に関する新しい発見ができそうなところまで来ている。唾を飲んだ翔真は伊織から数秒遅れて左に曲がり、普段はしない寄り道をした。迷いはなかった。
伊織はドラッグストアの前を悠然と通り過ぎ、その隣にある書店の出入り口へ吸い込まれるように入っていった。早く追いついてどのような本を手にするのか見たい。逸る気持ちが足を急がせる。
翔真は高揚感を深呼吸で抑え込みながら、駆け足にならないように一歩一歩ゆっくりと地面を踏み締めた。ここで変に早足になってしまうと、全てが水の泡になってしまうかもしれない。急ぐな。急ぐな。翔真は言い聞かせ、いつの間にか汗が滲んでいた手のひらを握ったり開いたりした。急ぐな。急ぐな。
ざわざわと騒ぐ鼓動を落ち着かせる意味も込めて、書店に近づく僅か数秒の間に、翔真は伊織以外の目的を探そうと煩悩塗れの頭を回した。何かないかとぐるぐると脳内を掻き回しているうちに顔が険しくなっていき、気づけばあっという間に書店に片足を突っ込んでいた。
翔真は僅かに下を向き、唇をギュッと引き結んで必死に普通を装った。何も考えずにのんびりと帰っている男子高校生を演じる。脳内では期待感を煽る出囃子のようなものが永遠に鳴り響いていたが、表面には噯にも出さないよう努めた。
翔真は意図せず口が開かないよう強く閉じたまま目を上げた。意識したせいか、いつもは気にも留めない書店の看板が、どんと視界に大きく映り込んだ。
一台の車が左折し、駐車場へ入っていく。数メートル先を歩く伊織が、もう一箇所ある出入り口から駐車場に足を踏み入れる。思った通りだと翔真はほくそ笑みそうになったが、書店の隣にはドラッグストアがあった。もしかしたらそちらの可能性もあるのではないかと、先走る感情に慌ててセーブをかけたものの、高校生が放課後にわざわざ寄る店ではないだろう。そう結論づけ、脳裏を過った思考を即座に打ち消した。
伊織に関する新しい発見ができそうなところまで来ている。唾を飲んだ翔真は伊織から数秒遅れて左に曲がり、普段はしない寄り道をした。迷いはなかった。
伊織はドラッグストアの前を悠然と通り過ぎ、その隣にある書店の出入り口へ吸い込まれるように入っていった。早く追いついてどのような本を手にするのか見たい。逸る気持ちが足を急がせる。
翔真は高揚感を深呼吸で抑え込みながら、駆け足にならないように一歩一歩ゆっくりと地面を踏み締めた。ここで変に早足になってしまうと、全てが水の泡になってしまうかもしれない。急ぐな。急ぐな。翔真は言い聞かせ、いつの間にか汗が滲んでいた手のひらを握ったり開いたりした。急ぐな。急ぐな。
ざわざわと騒ぐ鼓動を落ち着かせる意味も込めて、書店に近づく僅か数秒の間に、翔真は伊織以外の目的を探そうと煩悩塗れの頭を回した。何かないかとぐるぐると脳内を掻き回しているうちに顔が険しくなっていき、気づけばあっという間に書店に片足を突っ込んでいた。



