嘘と欲求

 全力で飛ばした呪いが跳ね返ってきたかのように止めを刺され、自滅する。終わった。伊織を窺う意味も見出せないほどに、夢も希望も何もないすっからかんな席だった。終わった。

 生徒が荷物を持ってぞろぞろと移動し始める。突っ伏してしまいたくなるくらい最悪な気分だが、さっさと動かなければこの席を引き当てた人に迷惑がかかってしまう。

 翔真は憎きくじを握り潰し、荷物をまとめた。そうしながら、誰かを責めたい衝動に駆られていた。このくじを選んでしまったのは、例の男子生徒が早く引けと催促してきたせいだ。これを引いて最前列になってしまったのは、担任がその枠に五を書き入れたせいだ。自身の運が悪かっただけで誰の責任でもないのに、まるで器の小さい翔真は他人のせいにせずにはいられなかった。

 荷物を抱え、嫌々ながらも決して文句は口にせずに机と机の間を縫う。感情を全て声に乗せている生徒の脇を通り過ぎ、既にもぬけの殻となっている席に非常に重たい腰を下ろした。ここは最後にくじを引いた人の席でもあった。当の本人は一体どこへ、と首を動かすと、最も後ろの席でその姿を発見した。満面の笑みを浮かべていた。残り物には福があるとはよく言ったものである。

 翔真は羨望のあまり睥睨してしまいそうになった。気づかれる前にサッと顔を背けようとした時、翔真の目は恐ろしいものを捉えてしまう。

 伊織がいた。残り物で幸を掴んだ男子生徒の隣の席に座ろうとしている伊織がいた。ジャンケンに一発で勝つだけでなく、まだ誰も手をつけていないくじを引いて後ろの席を当ててもみせた伊織は、なんて運が良いのだろう。

 夢も希望も何もない席であることは分かっていたが、ここまでとは思わなかった。絶望の中にも更なる絶望があるのかと翔真は無気力に椅子の背に凭れ、鼻から息を吐き出した。

 最前列と最後列。この位置関係では、ほぼ一日中、伊織を自然な形で見つめることはできそうにない。ひとまず、親友は運が良いとだけ脳内メモに追加したが、今後の収穫はなかなか思うようにいかないかもしれない。