言い出しっぺの男子生徒が席を立った。くじの入った手製の紙箱を持ち、左右に振ってシャッフルしながら伊織の元へ向かう。数字を書き終えた担任は干渉せず、生徒の自主性を尊重しているようだった。
トップバッターの伊織が、選ぶような仕草はせずに適当にくじを摘んだ。前列前列前列、と祈るように念を送る中、伊織が早速紙を広げようとする。その行動を、男子生徒が止めに入った。
「全員が引いてから見ない?」
目を上げた伊織は、うんともすんとも言わずにただ一つ頷いて、開きかけた紙を元の形に折り畳む。口を開かない伊織を気にした様子もなく、男子生徒は礼を言って後ろへ移動した。
伊織が寡黙な人であることは、皆が知っていることだった。近寄りがたい印象はあるが、素行が悪いわけではない。物静かなだけなのだ。
一言だけだが伊織に話しかけた、今現在くじを持って回っている男子生徒の物怖じしない性格が羨ましい。翔真にはできない。簡単ではない。なぜ普通に喋れるのだろう。きっと伊織と目も合った。端正な顔面を目の前にして、なぜ平気でいられるのだろう。聞いてみたいが、それすらも翔真は聞けない。伊織に限らず、人に話しかけるのは得意ではなかった。会話をして情報を得る行為は、一生できる気がしない。
翔真がくじを引く順番がやってきた。できるだけ後ろの席を引きたい翔真は、伊織のようにさっさと選ぶ真似はせず、暫し紙箱の中のくじを睨みつけるようにして見つめた。透視などできないが、せめてもの抵抗だった。
人一倍真剣に悩む翔真の眼前で、男子生徒が持っている紙箱を左右に揺らした。中のくじが移動する。催促されているようだった。あまり逡巡してはいられない。時間をかけたとて分かることなど何もない。翔真は大人しくピントが合ったものを手に取った。
指先で摘んだ、四つ折りにされたくじを検分するようにじっくりと眺めた。当然ながら、何も見えない。何かが変わるはずもない。裏返してみても同じだった。
本当にこれでよかったのか。これは後列に埋まっている数字のどれかなのか。
トップバッターの伊織が、選ぶような仕草はせずに適当にくじを摘んだ。前列前列前列、と祈るように念を送る中、伊織が早速紙を広げようとする。その行動を、男子生徒が止めに入った。
「全員が引いてから見ない?」
目を上げた伊織は、うんともすんとも言わずにただ一つ頷いて、開きかけた紙を元の形に折り畳む。口を開かない伊織を気にした様子もなく、男子生徒は礼を言って後ろへ移動した。
伊織が寡黙な人であることは、皆が知っていることだった。近寄りがたい印象はあるが、素行が悪いわけではない。物静かなだけなのだ。
一言だけだが伊織に話しかけた、今現在くじを持って回っている男子生徒の物怖じしない性格が羨ましい。翔真にはできない。簡単ではない。なぜ普通に喋れるのだろう。きっと伊織と目も合った。端正な顔面を目の前にして、なぜ平気でいられるのだろう。聞いてみたいが、それすらも翔真は聞けない。伊織に限らず、人に話しかけるのは得意ではなかった。会話をして情報を得る行為は、一生できる気がしない。
翔真がくじを引く順番がやってきた。できるだけ後ろの席を引きたい翔真は、伊織のようにさっさと選ぶ真似はせず、暫し紙箱の中のくじを睨みつけるようにして見つめた。透視などできないが、せめてもの抵抗だった。
人一倍真剣に悩む翔真の眼前で、男子生徒が持っている紙箱を左右に揺らした。中のくじが移動する。催促されているようだった。あまり逡巡してはいられない。時間をかけたとて分かることなど何もない。翔真は大人しくピントが合ったものを手に取った。
指先で摘んだ、四つ折りにされたくじを検分するようにじっくりと眺めた。当然ながら、何も見えない。何かが変わるはずもない。裏返してみても同じだった。
本当にこれでよかったのか。これは後列に埋まっている数字のどれかなのか。



