嘘と欲求

 そわそわと落ち着かなくなる。自然と瞬きが多くなる。テーブルの横を通り、翔真の側で足を止めた伊織が膝を折った。目線を合わせられた。なんだよ、と発した声が、思っていた以上に掠れていた。

 伊織は翔真から目を離さない。お願いとやらを喋る気配もない。次第に気まずくなり、翔真は伊織の肩の辺りに目を下げた。

 手を伸ばせば余裕で触れられる距離に伊織がいることに妙な圧迫感を覚え始め、さりげなく尻を引き摺り後退る。開放感のある外とは異なる室内の閉塞感が、圧となって翔真を萎縮させているかのようだった。先程までは、伊織との間にテーブルという名の障害物があったおかげで、居心地の悪さを感じずに済んでいたのかもしれない。

 緊迫した空気が流れていた。身じろぎするのも躊躇ってしまいそうだった。お願いがあると口火を切っておきながら、追い詰めるようなプレッシャーを吹っ掛けてばかりでいつまで経っても話さない伊織。

 だんだん不審に思い始めたところで、見つめる先にある伊織の肩から下がスッと音もなく動いた。動くはずのない銅像が動いたのを目の当たりにしたみたいに心臓が跳ね、息が止まりそうになった。

 決して銅像などではない伊織の両手が、こちらに伸びてきている。え、と声が漏れた。空気が抜けるような息が漏れた。反射的に伊織の腕を掴む寸前で、剥き出しの首を両手で覆われた。

 顔が引き攣った。現実逃避をするように、口元が歪んだ。別に笑いたいわけではないのに、下手くそな笑みがぺたりと張り付いた。

 伊織の腕に自分の指が食い込んだ。熱のない無機質な目をした伊織は手を引かなかった。息をする度に喉が震えるのが分かった。

「な、なん、なんだよ、これ……」

「黙って聞いてくれる?」