嘘と欲求

 もう一度熟考しても、それらしい答えは見出せなかった。伊織が分からない。話がどこに着地するのか分からない。分からないことばかりで、自力で解き明かせないことばかりで、徐々に苛立ちが募り始める。自分だけが混乱している。こちらの反応を観察するような伊織の眼差しにも、だんだん腹が立ってくる。

「し、親友にしたのは、申し訳ない、って思ってる。で、でも、今は、そんな話、してないだろ?」

「西原が俺を親友にしたことは、俺が西原を仲間だと思った話に通ずることだよ」

「だ、から、そ、それが、分かんないんだよ。仲間、ってのが、全然」

 発した言葉に、多少のイライラが表れているのが自分でも分かった。意識して、息を吸って、吐く。常に冷静な伊織を前に、自分一人だけが熱くなってしまうのは避けたい。ここで相手の気分すら害する苛立ちを見せたら、まだまだ精神的に未熟であることを証明する羽目になりそうだ。翔真は懸命に、分からないストレスを抑え込んだ。

 身体が熱くなるほどの苛立ちを心に蓄えても、気弱そうな喋り方は悲しいくらいに変わらなかった。伊織にプレッシャーも何も与えられていない。口下手は、喜怒哀楽のどのような感情に陥ろうが、口下手なままなのだ。

 取られている主導権を取り返そうにも、伊織を言い負かす術は翔真にはない。逆転するのは限りなく不可能に近かった。

 結末まで見えているような、あるいは、自分で最後を決められるほどの余裕があるような伊織は、変わらない無の表情で翔真を凝視していた。どのようにして自分の理想とするエンドにするか、翔真の反応を見ながら様々なパターンを想像しているかのようで、まるでゲームブックみたいな感覚で自分と話をしているのではないかと馬鹿なことを思った。

 選択によって結末が変わるゲームブックであれば、次に伊織は何を選択するのだろう。まだ自分に真相を明かしてはくれないのだろうか。もっとイライラさせるために焦らすつもりでいるのだろうか。