嘘と欲求

 どれもこれも迷いなく即答された。予め準備していた台詞であるかのようにも聞こえた。

 伊織は質問に答えてくれたはずなのに、納得するどころかますますこんがらがってしまう。翔真の理解の範疇を超えている。読んでないのに勧めた。理由は、仲間だと思ったから。意味が分からない。伊織の意図が全く読めない。仲間、とは何だ。

 また新たに浮上した疑問に、翔真は頭を抱えてしまった。前触れもなくいきなり自供のような真似をして、伊織は何を企んでいるのか。自分に何を求めているのか。伊織の告白は、問題提起となっているはずの炎上と何か関係があるのか。

 伊織の中では綺麗に結びついているのだろう点と点は、翔真の中では途中で線が途切れており、全く結びついていなかった。ただはっきりしていることは、伊織は翔真に勧めた本を読んでいないこと。伊織は翔真をなぜか仲間だと思っていること。何度頭を働かせてみても、それらの事実に続く道は真っ暗なままだった。

「ぜ、全然、意味、分かんないって。な、なんだよ、仲間って。俺と、雨宮、ど、どこが、仲間なんだよ。か、勝手に、仲間にして、読んでない本、勧めるとか、り、理解できない、っていうか……」

「人を勝手に親友にするのも理解できないよ」

 不意に切り込まれ、喉が変な音を立てた。視線がうろちょろしてしまう。伊織と目を合わせられなくなる。

 スマホを伊織に見せてから初めてその件に関して咎められ、言い返す言葉が見つからない。伊織を親友にした翔真が、翔真を仲間にした伊織にとやかく物を言ったとて、お前もそうだろとブーメランのように自分に返ってくるのは、少し考えれば分かるオチだった。

 親友と仲間。互いの知らないところで、似ているようで異なる関係にしていた事実を突き付けられる。

 承認欲求を満たすために、顔の整っている伊織を親友にした翔真のように、伊織も何かしらの理由があって、翔真を仲間だと認識した。なぜなのかは皆目見当もつかなかった。伊織との共通点などないに等しいはずなのに、一体自分のどこに、仲間だと思う要素があるのか。