人のスマホを勝手に操作して勝手に見るなんて、と伊織を咎めてしまいそうになったが、既に勝手な真似をして気づかぬうちに灯油を撒いていた自分にその資格はないと思い直した。反抗するのは諦めた。確認するのもやめにした。翔真が口で勝てるはずもない。
「……うん、まあ、面白かった。俺でも、読めたし、なんか、止まらなくなるくらい。雨宮に、おすすめ、されなかったら、多分一生、読まなかったと思う。本の面白さも、知り得なかったと思う」
「嘘は吐いてないみたいだね。直感で選んだ『成瀬』に賭けた甲斐があったよ」
「え、ん? ちょ、直感? 賭け? え、や、急に、何の話……」
「『成瀬』が面白いかどうかも、読みやすいかどうかも、一か八かの賭けだった話」
伊織の唐突な告白に、頭に疑問符が飛び交った。伊織は一体、何を言っている。賭け、とは何だ。一か八かの賭け、とは。この本を勧めてよかった、であればまだ分かる。でも、賭けた甲斐があった、とは何だ。
人に本を勧めるのは賭け事のようなものなのか。実際に読んでみて、面白かったから、読みやすかったから、勧めたのではないのか。読んだことがあるのなら、賭けという不安を煽る言葉は出ないはずだ。それとも、この場合の賭けとは、相手に気に入ってもらえるかどうかの賭けという意味なのか。
でも、だったら、面白いかも読みやすいかも知らないみたいな言い方は変ではないか。それではまるで、伊織は該当の本を読んでいないみたいではないか。そう思案して、まさか、と唇を歪めた翔真は細く息を吸った。
「な、なんか、あの、雨宮の、その、言い方だと、自分は、『成瀬』を読んでない、みたいに、聞こえるんだけど……」
「読んでないよ」
「……は? え? よ、読んでない? う、嘘だろ? え、じゃ、じゃあ、なんで、読んでないのに、なんで、す、勧めたんだよ」
「西原は、俺の仲間だと思ったから」
「……うん、まあ、面白かった。俺でも、読めたし、なんか、止まらなくなるくらい。雨宮に、おすすめ、されなかったら、多分一生、読まなかったと思う。本の面白さも、知り得なかったと思う」
「嘘は吐いてないみたいだね。直感で選んだ『成瀬』に賭けた甲斐があったよ」
「え、ん? ちょ、直感? 賭け? え、や、急に、何の話……」
「『成瀬』が面白いかどうかも、読みやすいかどうかも、一か八かの賭けだった話」
伊織の唐突な告白に、頭に疑問符が飛び交った。伊織は一体、何を言っている。賭け、とは何だ。一か八かの賭け、とは。この本を勧めてよかった、であればまだ分かる。でも、賭けた甲斐があった、とは何だ。
人に本を勧めるのは賭け事のようなものなのか。実際に読んでみて、面白かったから、読みやすかったから、勧めたのではないのか。読んだことがあるのなら、賭けという不安を煽る言葉は出ないはずだ。それとも、この場合の賭けとは、相手に気に入ってもらえるかどうかの賭けという意味なのか。
でも、だったら、面白いかも読みやすいかも知らないみたいな言い方は変ではないか。それではまるで、伊織は該当の本を読んでいないみたいではないか。そう思案して、まさか、と唇を歪めた翔真は細く息を吸った。
「な、なんか、あの、雨宮の、その、言い方だと、自分は、『成瀬』を読んでない、みたいに、聞こえるんだけど……」
「読んでないよ」
「……は? え? よ、読んでない? う、嘘だろ? え、じゃ、じゃあ、なんで、読んでないのに、なんで、す、勧めたんだよ」
「西原は、俺の仲間だと思ったから」



