隠し事を抱える翔真の背後で、伊織が玄関の扉を閉めた。他人の家の床を我先には踏めず、置物のようになる翔真を一瞥した伊織が、落ち着き払った様子で靴を脱ぐ。突っ立っていた翔真は、ようやく動いていい許可が出たかのように伊織に倣って靴を脱いだ。
伊織は階段を上っていく。翔真は黙ってついていく。二人分の不揃いな足音が二階の廊下を踏む。少し進んだ先にある部屋の扉を開けた伊織が中へ入るのを見て、たじろぎつつ翔真も後に続いた。
背後でパタンと扉の閉まる音。続け様にガチャと鍵のかかる音、は幻聴である。翔真が巻き添えにした伊織の家に上がっている緊張感と、まだ慣れない伊織の匂いで息を吹き返した罪悪感が、翔真を極限状態に陥らせていた。
扉の前で挙動不審になる翔真を気に留めない伊織は、部屋の中央に鎮座しているテーブルの上にあった白いリモコンを手に取り、ピッとエアコンをつけた。
スイッチを入れられ叩き起こされた家電が、唸り声を上げながら面倒臭そうに稼働する。さっさと冷やせばいいんだろと言わんばかりに、吹き出し口から不機嫌そうに風を吹かせ始める。徐々に加速しながら部屋の空気がぐるぐると旋回した。長くなるかもしれないのを悟った。
「座っていいよ」
リモコンを手放した伊織が、床に足が縫い固められたかのように微動だにしなくなっている翔真を、短い言葉だけで招いた。こちらを見ず、テーブルの前に腰を下ろす伊織。
視線を彷徨わせる翔真はやっとの思いで床から足を引き離し、そろそろと歩いて伊織の対面に座った。そこしか空いていないように見えた。多分そこが正解だった。
エアコンのかったるそうな稼働音のみが部屋を満たす。喋らない時間が続いた。息苦しさを覚える気まずい沈黙。自分から切り出した方がいいのだろうか。いや、でも、自宅に連れ込んだのは伊織だ。翔真のスマホを盗ってまで。伊織の言葉通りについてきたのに、まだスマホは返却されそうにない。
伊織は階段を上っていく。翔真は黙ってついていく。二人分の不揃いな足音が二階の廊下を踏む。少し進んだ先にある部屋の扉を開けた伊織が中へ入るのを見て、たじろぎつつ翔真も後に続いた。
背後でパタンと扉の閉まる音。続け様にガチャと鍵のかかる音、は幻聴である。翔真が巻き添えにした伊織の家に上がっている緊張感と、まだ慣れない伊織の匂いで息を吹き返した罪悪感が、翔真を極限状態に陥らせていた。
扉の前で挙動不審になる翔真を気に留めない伊織は、部屋の中央に鎮座しているテーブルの上にあった白いリモコンを手に取り、ピッとエアコンをつけた。
スイッチを入れられ叩き起こされた家電が、唸り声を上げながら面倒臭そうに稼働する。さっさと冷やせばいいんだろと言わんばかりに、吹き出し口から不機嫌そうに風を吹かせ始める。徐々に加速しながら部屋の空気がぐるぐると旋回した。長くなるかもしれないのを悟った。
「座っていいよ」
リモコンを手放した伊織が、床に足が縫い固められたかのように微動だにしなくなっている翔真を、短い言葉だけで招いた。こちらを見ず、テーブルの前に腰を下ろす伊織。
視線を彷徨わせる翔真はやっとの思いで床から足を引き離し、そろそろと歩いて伊織の対面に座った。そこしか空いていないように見えた。多分そこが正解だった。
エアコンのかったるそうな稼働音のみが部屋を満たす。喋らない時間が続いた。息苦しさを覚える気まずい沈黙。自分から切り出した方がいいのだろうか。いや、でも、自宅に連れ込んだのは伊織だ。翔真のスマホを盗ってまで。伊織の言葉通りについてきたのに、まだスマホは返却されそうにない。



