嘘と欲求

 喉が潰れたような変な音が鳴った。翔真が頑なに炎上の経緯を喋ろうとしない理由を、早くから察していたような口振りだった。

 伊織は一度、翔真を疑っている。つけ回しているのではないかと。公園での盗撮にも気づいているだろう。画面越しに伊織とばっちり目が合った記憶が、誤って撮ってしまった写真を消去しても鮮明に残っていた。

 人には言えない行いを、SNSでしていると勘付かれている。尻尾を掴まれていたのに気づかないまま、胸に抱えた秘密を一生懸命死守しようとしていたなど滑稽でしかなかった。

 ずるずると引き摺り出され、全てが露わになろうとしているのに気づいた途端、力が抜けそうなほどの虚無を覚えた。張っていた緊張の糸が、ぷつんと切れた。

 口調は穏やかだが言葉の重い伊織に完全敗北した翔真は、大人しくスマホを手にした。該当の投稿を開く。盗撮写真。親友の文字。嘘の出来事。炎上を表す数字。

 醜い自分の姿を直視すると決意が揺らぎそうになったが、今更どう足掻いても逃げられないと腹を括った。

「……これが、まあ、炎上しまして。最初は、雨宮に対して、イケメンだなんだって、悪くない反応を、貰ってたんだけど、あのー、雨宮の、元同級生だっていうアカウントが、出現してから、雲行きが怪しくなりまして。で、俺が投稿した画像も、と、盗撮写真じゃないか、って、バレてしまいまして。結果、二重で炎上が起きたと言いますか、なんと言いますか」

 自然と敬語になっていた。正座をさせられている気分から、自ら正座をしている気分になっていた。

 へらへら笑って誤魔化そうにも、笑って誤魔化せる状況ではない。翔真から受け取ったスマホを見下ろす伊織が、全く笑っていない。

 伊織の予想通り、辿々しくて下手くそだった翔真の説明が、ぼとぼとと地面に落ちる音が聞こえた気がした。普通は聞こえるはずのない音が聞こえてしまいそうなくらいの、重苦しい沈黙だった。