嘘と欲求

「あ、雨宮、炎上してるの、知らなかったんだろ? 自分が、何言われて叩かれてるのか、知らずに済んでるなら、その方がいいと思って。だ、だから、言わないでおこうって、話、切り上げたのに。それなのに、なんで、自分から、傷つきに行こうとするんだよ。ドMかよ」

 ピシッと空気が張り詰めた。亀裂の入る音がした。衝動を伝える熱が冷め、瞬く間に血の気が引いていく。

 勢い余って余計な一言を付け加えてしまった。こちらが劣勢で、展開をひっくり返す算段すらないのにわざわざ挑発する発言をしてしまうなど、一体どちらがドMなのか。

 口撃の強い伊織には、翔真の挑発など効くはずもない。見つめられると迫力すら感じる伊織の目が、翔真を捕らえて離さなかった。流れる汗が冷たくなっていた。

「不快だよね、普通に」

「ふ、不快……?」

「炎上してるって言われたのに、俺が把握してないだけですぐに話を切り上げられるの、普通に不快だよね」

「……いや、でも、これは、見ない方がいいって。本当に。多分、死にたくなる、だけだし。俺は、まだ、傷つかずに済んでる、雨宮のためを思って、言ってるわけで」

「別に自分への誹謗中傷を見たいわけじゃないよ。なんで炎上してるのか、それを説明してほしいだけ。理由もなしに、炎上なんかするわけないよね。それとも、俺には話せない内容で燃えてるの?」

 首を絞められたかのように喉が詰まった。言葉が見つからずに目が泳いだ。話せない内容で燃えている。ビンゴである。まさにその通りである。

 もう観念するしかないのだろうか。土下座覚悟で打ち明けるしかないのだろうか。炎上した経緯を説明するには、翔真が何者としてSNSを使用していたかも言わなければ辻褄が合わなくなる。伊織を親友にして一人で盛り上がり、盗撮までした話は、切っても切り離せない話だ。