咳をして喘ぐ翔真は、懸命に息を整えながら目を上げた。先ほどよりも近い距離で、伊織と再び視線が重なった。
固く唇を引き結んで静かに歩いていた伊織が、翔真の目の前で立ち止まる。肩で息をする翔真を心配するでもなく、かといってSNSの惨状に対して憤怒するでもなく、ただ無言で瞬きを繰り返していた。
感情が読めない。学校でよく見ていた表情と何も変わっていない。変わらなすぎて、人違いなのではないかと疑いそうになった。あれだけ炎上しているのに、あまりにも平常心すぎて。
でも、もしかしたら、心労を顔に出さないようにしているだけなのかもしれない。伊織は、良くも悪くも全部顔に出る翔真とはまるで真逆なのだから。
「雨宮、よかった、会えて……」
途切れ途切れに口にした言葉が地面に落ちていく。流れる沈黙。伊織は何を考えているのか、まだ口を開かない。
寡黙な人であるのは知っているが、こちらが何を言っても最初から最後まで無言を貫かれてしまうと焦燥に駆られる。怒りを必死に抑え込んでいるが故の沈黙なのだろうか。
不安を覚えた翔真は、真っ先に頭を下げて誠意を見せようと、滴る汗を拭って腰を折ろうとした。
謝れば済むと思ってんのかよ。唐突に、顔の知らない他人から寄せられた厳しい意見が脳内で再生された。のっぺらぼうのような人間の声。ネット上に潜む魔物の声。翔真は咄嗟にその声を振り払う。謝って済むなどとはもう思っていない。それでも、自分の非を認めて謝る行為が悪いとは思えない。
「あまみ──」
「珍しいね、西原から声かけてくるなんて」
ピタッと翔真の動きが停止する。話すタイミングが見事に被り、反射的に引き下がってしまった。先の言葉を続けられず、謝罪が喉奥に引っ込んでいく。
固く唇を引き結んで静かに歩いていた伊織が、翔真の目の前で立ち止まる。肩で息をする翔真を心配するでもなく、かといってSNSの惨状に対して憤怒するでもなく、ただ無言で瞬きを繰り返していた。
感情が読めない。学校でよく見ていた表情と何も変わっていない。変わらなすぎて、人違いなのではないかと疑いそうになった。あれだけ炎上しているのに、あまりにも平常心すぎて。
でも、もしかしたら、心労を顔に出さないようにしているだけなのかもしれない。伊織は、良くも悪くも全部顔に出る翔真とはまるで真逆なのだから。
「雨宮、よかった、会えて……」
途切れ途切れに口にした言葉が地面に落ちていく。流れる沈黙。伊織は何を考えているのか、まだ口を開かない。
寡黙な人であるのは知っているが、こちらが何を言っても最初から最後まで無言を貫かれてしまうと焦燥に駆られる。怒りを必死に抑え込んでいるが故の沈黙なのだろうか。
不安を覚えた翔真は、真っ先に頭を下げて誠意を見せようと、滴る汗を拭って腰を折ろうとした。
謝れば済むと思ってんのかよ。唐突に、顔の知らない他人から寄せられた厳しい意見が脳内で再生された。のっぺらぼうのような人間の声。ネット上に潜む魔物の声。翔真は咄嗟にその声を振り払う。謝って済むなどとはもう思っていない。それでも、自分の非を認めて謝る行為が悪いとは思えない。
「あまみ──」
「珍しいね、西原から声かけてくるなんて」
ピタッと翔真の動きが停止する。話すタイミングが見事に被り、反射的に引き下がってしまった。先の言葉を続けられず、謝罪が喉奥に引っ込んでいく。



