「俺達みたいな人間は情を持たないように生きてきたからこそ…一度惚れてしまうと止められない」
裏社会で、情なんてものは弱みになる。
それでも人間である以上、心までは殺せない。
一度惚れた相手のためなら、命も、立場も、全部差し出してしまう。
親父も……そうだったのか…?
「……お前の母──梓は元々、神楽組の敵組織の娘だった」
「え……」
そんなこと、初めて聞いた。
そもそも、両親のことはあまり知らない。
「恋って感情は厄介だ。どうしても諦めきれなかった俺は、全てを敵に回してでも戦った。…でも俺は、一度も後悔していない」
親父は立ち上がり、俺の前に立った。
「惚れた相手なら、死ぬきで守って、幸せにしろ。半端な覚悟なら…」
重たい声が、胸に落ちる。
「組を出たこと、後悔させる」
そんなの、言われなくなってそのつもり。
「死んでも守るし、俺があいつを世界一幸せにする」
視線を逸らさず言い切った。
これは、誰のためでもない。
俺自身の誓いだ。
神楽組の若頭としてじゃない。
神楽蓮という肩書きでもない。
ただ一人の男として、選んだ覚悟だった。

