そのキス、契約違反です。




✳︎





──翌日。


窓の外はいつも通りの朝の光が差していて、昨晩起きたことが嘘だったかのように空は澄んでいた。


でも、身体の奥に残る重さとまだ抜けきらない緊張が、すべてが現実だったと教えてくる。



あの後、闇オークションは完全に閉鎖された。


警察と Aegis(イージス)の連携で船は完全に包囲されて、地下に閉じ込められていた人たちも全員無事に解放されたらしい。

証拠は押さえられ、もう二度とあの場所で同じことは繰り返せない。


Nocturne(ノクターン)も、黒蛇会も、──そして悠真も、関わっていた人間は全員連行されたと聞いた。




悠真だけは、最後まで抵抗しなかったらしい。

自分から両手を差し出して淡々と手錠を受け入れた、と。

反省も後悔も口にしなかったけど、暴れもしなかったそうだ。



きっと、あの人は最後まで自分の選択を否定しなかったんだと思う。

だからこそあのとき向けられたあの笑みが、今も胸の奥に焼きついて離れない。



銃を撃った指先を、そっと握りしめる。


正しかったのかどうかは今も分からない。


でも、少なくとも——私は、逃げなかった。

ちゃんと過去と向き合って、自分で選んだ結末。


それだけは、胸を張って言える。