そのキス、契約違反です。




【side彩葉】




蓮が止まってくれて、一安心したのも束の間。



床に倒れ伏す黒蛇会の男たちの間を、足音がひとつ、静かに戻ってきた。


まだ仲間がいるのかと身構えたけど、そこに立っていたのは──冷静な表情のままの悠真だった。


まるで最初から、こうなると分かっていたみたいな顔で。

倒れた男たちを“敵”とも“仲間”とも見ていない視線で一瞥して、ほんの少しだけ肩をすくめる。



「……随分、派手にやったねー」



その軽さに、奥歯を噛みしめる。


蓮も、律も、随分と体力を消耗している。


さっきまで、2人とも薬でやられていたんだ。

無理やり引き戻した身体は今にも限界を迎えそうで、体力が一気に底をついているのが分かる。



だから、私は一歩、前に出た。



逃げない。

これは、私が自分でつけるべき決着。



悠真の視線が、ゆっくりと私に向く。

その瞬間、空気が変わった。



「……その目」



懐かしそうに、でもどこか嬉しそうに、悠真が笑う。



「変わらないね」



その言い方が、どうしようもなく嫌だった。


過去を知っているというだけで、私の“今”まで分かったつもりになる、その距離感。