そのキス、契約違反です。




やっと自由になった体を起こして、脱がされかけたドレスの背中に手を伸ばす。

ファスナーを上げようとするけど指先が震えて噛み合わない。


……動け。


私も、戦える。

守られるだけなんて、嫌だ。


そう思うのに、体はいうことを聞いてくれない。



「ここは俺が引き受ける。蓮くんは彩葉のそばへ行って」

「……、分かった」



短いやり取り。


そして、蓮は私の前にしゃがみ込んで視線を合わせる。




「……彩葉」



迷いなく着ていたジャケットを脱ぐと、私の肩にそっと掛けた。



「遅くなって、ごめん」

「…れ、ん……」



震える声で名前を呼んだ瞬間、蓮の腕が私を強く引き寄せた。


…あったかい。

体温が、背中から胸に、じわじわと染み込んでくる。



「……っ、……」



怖かった、なんて言葉にする前に。

溜め込んでいた感情が、全部まとめて決壊したみたいに。
 

ぽた、と。


頬を伝って涙が落ちた。



蓮の腕に、一瞬だけ力が入る。