そのキス、契約違反です。






【side彩葉】




押さえつけられた体が、びくりと跳ねた。


「……っ」


視界の端で、扉が乱暴に蹴り倒されるような乾いた破壊音と、舞い上がる砂埃。


あまりにも突然で、何が起きたのか理解が追いつかなかった。



でも。

次の瞬間。



「——おい」



聞き慣れた、低い声。

男たちの動きが止まり、押さえつけられていた手の力がほんの一瞬緩んだ。



……蓮…。


こんな、タイミングで。

本当に、助けに来てくれてしまうなんて。


…その姿を認識した途端、どうしようもなく安心してしまうなんて。



「……あ?」



男の一人が振り返った、その直後。


鈍い衝撃音と共に、拳が男の顔面を捉える。


「——がっ」


そして私を押さえつけていた体が、乱暴に引き剥がされた。

次に視界に入ったのは。


律…?!



「邪魔」



感情の一切を削ぎ落とした声で、律は男を蹴り飛ばす。


……律も、蓮も、さっきまであんな状態だったずなのに。