そのキス、契約違反です。





「……悪い」



絞り出すように言うと、榛名は目を伏せた。



「謝ってほしいわけじゃない。………ホールに戻るよ。まだ終わってない」



そう言って、榛名は踵を返す。


俺は歯を食いしばって、その後を追った。



ホールに戻って勢いよく扉を開けた瞬間、異様な緊張が肌を刺してきた。


中央で、黒瀬悠真と黒蛇会の人間が対峙している。



「……仲間割れ?」



思わず呟くと、悠真の視線がこちらを捉えた。


一瞬だけ。

ほんの一瞬、目が合う。



「来たか」



悠真が口角だけを上げる。

黒蛇会の男が振り返り、舌打ちした。



「……神楽」



俺は一歩、前に出た。



「彩葉はどこだ」



迷わす問い詰めると、

悠真は驚くほどあっさり答えた。



「最上階、一番奥の個室」



拍子抜けするほど、あっさりと。