そのキス、契約違反です。





色々な感情が脳内を巡るけれど、今はそんなこと言っている場合じゃない。



黙っている俺を榛名が見逃してくれるわけもないので、事の内容を短く答えると、


次の瞬間、胸倉を掴まれた。



「お前、なんで止めなかった!」



怒鳴り声が、地下に反響する。


「っ…」


俺は一瞬、言葉を失った。


いつも冷静な榛名がこんなふうに感情を露わにするのを、初めて見たから。



「好きな女なら死んでも守れ!守れないなら、最初から手を出すな」



抑えきれずに溢れた感情。

その全部が、榛名の覚悟そのものだった。



「……」



何も言えなかった。


反論したかった。


……でも、正論なんだ。


痛いほど、わかっている。


「俺は」


榛名は一度、息を吐いてから続けた。



「彩葉に恨まれてでも彩葉を守る覚悟がある」



その言葉が、胸に突き刺さる。



「それが、相手を守るってこと」



俺は…そこまで踏み込めていなかった。


相手に嫌われてでも、好きな人を守る覚悟。


…………彩葉はとっくに、その覚悟をしていた。