そのキス、契約違反です。





「……もう大丈夫だ。今開ける」



一つ、また一つ鍵を回す。

鉄が軋む音の向こうで、張り詰めていた空気がほどけていく。



「ありがとう…ございます…!」



その言葉を向けられて、胸の奥がちくりと痛んだ。


……違う。

それを受け取るべきなのは、俺じゃないんだ……。



「後で全部説明する。今は、ここから出て安全な場所に逃げろ」



それだけ言って、背を向ける。

立ち止まっていたら、足が動かなくなりそうだった。



そのまま地下の通路を進んでいると──



「……蓮くん」



…この声、榛名?



呼ばれて顔を上げると、榛名がそこに立っていた。



顔色が悪い。


無理をしてここまで来たのが一目でわかる。

それでも、仮面越しでも分かるぐらいに、目だけは異様に冴えていた。



「……彩葉は?」



その一言で、胸を掴まれた気がした。

こいつは、いつだって彩葉の事を一番に考えている。



…… Aegis(イージス)での任務中…ってことはもしかして。

さっき彩葉とキスしてたのって──。



「……。」