そのキス、契約違反です。





「近づかないで」



そう言うと、男が鼻で笑った。



「強気だな」

「でもさぁ……その目。さっきから、震えてない?」



自分を見る視線が、どこをなぞっているのかわかってしまう。

服の上から、体の線をなぞるような目。



1人が近づいてきたのに合わせて拳に力を込めて、前に出る。

続けて、もう一人——



「……っ!」



想定より人数が多い。


力も、重い。

振りほどこうとした瞬間、別の手が伸びてきて肩を強く掴まれた。



「おっと。動くなよ」



耳元で、囁かれる。

そしてつけていた仮面を無理矢理奪われた。



「可愛い顔が台無しになる」

「…!」



………だめだ。


最近、こんな嫌な視線を向けられることはほとんどなかった。

だから余計に、心臓がうるさく鳴る。


認めたくない感情が、胸の奥に湧き上がる。



「……っ、離して!」



睨みつけて振りほどこうとした、その隙。


体勢を崩して背中に衝撃が走り、床に押さえつけられたと理解するまで一瞬遅れた。


気づけば体ごと押さえつけられている。